島根大学人間科学部心理学コースは、2017年に設置された人間科学部を構成する3コースのうち心理学を中心的に学ぶコースです。
コース内には、実験心理学分野と臨床心理学分野があり、認知心理学・社会心理学・発達心理学などの実験系心理学から、カウンセリングなどの臨床系心理学まで幅広く、専門的に学べます。
実験心理学分野では、実験や調査などの科学的手法を用いて、人間の心の仕組みを解き明かしていきます。研究目的や研究対象により、いくつかの領域へと細分化されます。心理学コースでは、主に以下の領域を専門とする教員がいます。
認知心理学 COGNITIVE PSYCHOLOGY
物理的な視覚対象あるいは網膜に映る像と異なる知覚(見え)が生じる場合があります。そのような場合のヒトの眼・外側膝状体・脳が行う視覚情報処理の仕組みを検討する研究を主に本研究室では行っています。
テーマ例
- 図地の知覚の研究
- 色の奥行き知覚の研究
- 変化盲の研究
- 巡回系列順序錯誤の研究
- メロディの研究
社会心理学 SOCIAL PSYCHOLOGY
私たちの生活の中には、常に他者がいて社会を形成しています。社会心理学では、このような社会を形成する他者の存在を想定して、そこに働く心理的メカニズムを探ります。
本研究室では、社会的行動や社会的感情が心身の健康状態にどのように影響を与えるかについて、主に実験的データを解析することを得意としています。
テーマ例
- 孤独感が人間関係や精神的健康に与える影響について
- 偏見的なステレオタイプと潜在意識との関係
- 社会的なつながりが心身の健康状態に与える影響について
- 社会的感情を利用して消費者行動を予測する
- 社会的認知が対人行動に影響を与える心理的メカニズム
- グループでの余暇活動が認知機能や主観的幸福感に与える影響について(共同研究)
- 社会的な役割が自尊感情を向上させる仕組みについて(共同研究)
発達心理学 DEVELOPMENTAL PSYCHOLOGY
発達心理学では、「心」の働きが、年齢とともに形成されていく過程・仕組みを明らかにします。本研究室では、乳幼児期を中心に、青年期ごろまでの人を対象とした研究を行っています。
テーマ例
- 幼児は願いごとの効力をどのように考えているのか?
- 幼児における方言と共通語の使い分け
- 幼児は実写・アニメのキャラクターの存在をどう考えているのか?
- 擬人的言語表現が対象の認知に及ぼす影響
- 子どもにおける対人交渉方略の発達
- 青年期の友人関係における理想と現実
家族心理学 FAMILY PSYCHOLOGY
「家族」は私たちが生まれて初めて所属する社会集団であり、私たちの人生のベースを形作る場でもあります。特に乳幼児期における主要な養育者との関係は、後の発達に重要であることも知られています。「家族」のような子どもたちを取り巻く環境が子どもたちの発達にどのような影響を与えるのか。子どもたちの明るい未来のためにどのような環境を用意してあげるべきなのか。どれも簡単に答えが見いだせる問いではありませんが、子どもたちの観察や実験を通して一緒に少しずつ明らかにしていきます。
学習心理学 PSYCHOLOGY OF LEARNING
わたしたちの「今のこころ」は,幼い頃から積み重ねてきた「記憶」の上に成り立っていると言えるでしょう。それでは,このような記憶はどのように形成され,そして,どのようにして今現在のわたしたちの行動や考え方に影響を与えているのでしょうか。過去の嬉しかった記憶や怖かった記憶,実は,「今のこころ」の状態に影響し,わたしたちの行動を駆り立てているはずです。そのようなこころの仕組みを探求しています。
臨床心理学分野では、人の心の働きについて、人間がそれぞれの発達段階に応じて直面する様々な悩みや困難から理解し、有効な心理的な援助の方法を探ります。
幼児期・児童期 CHILDHOOD
言葉ではなく、遊びや行動に現れる子どもの心を読み解き、支える方法を探ります。
思春期・青年期 ADOLESCENCE
心身に大きな変化が生じる時期を理解し、支える方法を探ります。現代の若者に人気の作品もヒントにします。
老年期 SENESCENCE
高齢者ならではの心を理解し、周囲の人々も合わせて支えていく方法を探ります。
心理査定 ASSESSMENT
人格や発達に関する理論の学習と心理テスト演習を通じて、心の個性を的確にとらえる力を磨きます。
臨床心理学のテーマ例
- 思春期における居場所の意味
- 青年の自己開示への抵抗感
- 不登校児の描画に現れる心の危機
- 親友と友達の違いについて
- クラスの気になる生徒のポジティブな役割
- 中学生・高校生の友人観の検討-SNSの影響に注目して-