島根大学大学院 自然科学研究科 環境システム科学専攻
物質化学コース 無機化学研究室 片岡グループ


私達のグループでは、多核金属錯体(パドルホイール型金属二核錯体)と発光性重原子錯体を中心に研究を行い、「金属錯体の能力を最大限に生かす」事を目標として機能性研究(人工光合成, 触媒, ガス吸着, クロミズム, 発光, 磁性)に励んでいます。

人工光合成 (光水素発生システム) // Artificial Photosynthesis


クリーンエネルギーとして期待される「水素」を生成する手段として、人工光合成システムが期待されています。 これまでに我々は、パドルホイール型金属二核錯体や多核金属錯体を水素発生触媒に使用した人工光合成システムを多数開発し、それらのシステムが、高効率に水素を発生する事が可能である事を明らかにして来ました。(Dalton Trans. 2019. ChemCatChem 2019.) また、新物質群を人工光合成システムへ応用することに関しても関心を持っています。例えば、片岡は、多孔性配位高分子 (PCP or MOF) を水素発生触媒に使用した人工光合成システムの開発に世界で初めて成功しています。(Energy Environ. Sci. 2009.)

超分子金属錯体 // Supramolecular Metal Complex


パドルホイール型ロジウム二核錯体は、エクアトリアル配位子とロジウム二核骨格との配位結合の強さを制御する事で、超分子錯体のビルディングブロックとして有効に利用可能となります。これまでに我々は、2つのピバル酸ロジウム二核骨格とジカルボン酸有機配位子を橋の様に連結することで、様々な"Dimer-of-Dimers型ロジウム四核錯体"の合成に成功しています。 (Dalton Trans. 2018.)

配位高分子錯体 // Coordination Polymers

パドルホイール型ロジウム二核錯体は、配位高分子錯体や有機金属骨格(MOFs)のビルディングブロックとして利用が可能です(Crystals. 2020)。我々は、これまでに1次元, 2次元の配位高分子錯体の開発に成功しています。リンカー配位子に、多座配位子(Eur. J. Inorg. Chem. 2016), センシング材料 (Chem. Sel. 2016.), ポルフィリン光増感剤(Inorg. Chem. Commun. 2016.)を組み込む事で多種多様な機能性を有するMOFsの開発に成功しています。

近赤外光吸収多核錯体 // Polynuclear Complex with NIR Absorption Feature

パドルホイール型ルテニウム二核錯体は, Ru2(II,II), Ru2(II,III), Ru2(III,III)の三種類の酸化数を形成可能なレドックス活性な金属錯体として知れています。特に我々は, 報告例が極めて少ないRu2(III,III)錯体の開発とその電子状態に関して実験と理論計算を利用して研究を行っています。(Polyhedron. 2017.) 最近では, アミノピリジンが配位したRu2(III,III)錯体が特異な近赤外吸収を示し(Dalton Trans. 2019.)、印加電圧に応答してそれらの吸収が劇的に変化するエレクトロクロミズム特性を示す事を発見しました(Dalton Trans. 2021.)。

クロミズム現象 // Chromic Behavior

パドルホイール型ロジウム二核錯体は, ロジウム二核骨格の軸位に配位する有機分子の種類に起因して色が劇的に変化する事が知れています。我々は, 有機溶媒蒸気に応答して錯体の色が変化するベイポクロミズム現象をロジウム二核錯体で確認することに成功しました。(Dalton Trans. 2020.)

発光性錯体 // Luminescence Complex

燐光発光を行うシクロメタレート型イリジウム錯体は、人工光合成反応や太陽電池における光増感剤として機能します。我々は、光物理特性や光化学的性質を制御する事を目的として、様々な分子構造の新規イリジウム錯体を鈴木カップリングなどの有機化学反応を使用して開発しています。(J. Photochem. Photobio. A. Chem. 2018.)