資源作物・畜産学コース

小林和広



小林和広 准教授 




研究業績等:https://researchmap.jp/read0015715
担当授業 資源作物学,農業のための生物統計学ほか

 地球大気CO2濃度の上昇によって地球温暖化が進行しつつあると懸念されています.イネは熱帯原産の作物とはいえ,気温が35℃を超すと花粉の発達が阻害され,受精がうまくいかないで,胚乳にデンプンを貯めることができなくなり,お米がほとんど取れなくなる可能性が指摘されています.このような高温障害を回避するための手段の1つして,早朝開花性(普通のイネよりも気温がまだ低い朝1,2時間,早く開花するイネ)を利用する研究が進められています.その開発の上で重要なポイントとなるイネが環境条件に反応して,何時に開花するか,その結果,受精障害をどの程度回避できるかを調べています.ジャスモン酸メチルという植物ホルモンが開花を促すので,このホルモンを利用できないかという研究も進めています.さらに実際に高温条件だとどうなるかを確かめるために海外(中国,フィリピン,ミャンマー),で共同研究をしてきました.
 現在,島根県出雲市平田町(宍道湖西岸)の水田を大規模な畑作もできる農地に改良する計画が進んでいます.現地ではこの機会を利用してアズキの大規模栽培が進んでいます.しかし,もともと水田だったところを利用することもあり,湿害の問題が懸念されています.アズキの植わったポットを深さの異なる水につけて,湿害の実験を行い,湿害に強い小豆の特性を探索しています.

 個人運営のホームページは以下のURLです.
 小林和広(島根大学生物資源科学部作物生産学研究室) (shimane-u.ac.jp).

ミャンマーのイエジン農業大学の実験水田

これはミャンマーの首都ネピドーにあるイエジン農業大学の実験水田です。わたしはここでイネの開花期における高温障害について調査しました.水田にカメラを並べて,イネの花が何時に咲くかを調査しました.現地では4月から5月にかけてが最も気温が高くなり,最も暑い日では最高気温が42℃ぐらいになりました.このような暑い気温でイネの花がいつ咲くか,そして咲いた花が受精する能力を保持できるのかについて研究しました.

イネの開花

これはイネの花が咲いているときの写真です。イネの花は島根県松江市では午前11時から12時頃に咲きます.花が咲いている時間は1時間程度です.この写真ではイネの花が咲いて,その中にある葯(花粉の入っている袋)が出てきている状況を示しています.もうこのときには葯からほとんどの花粉が出て,柱頭の上に落下しています.しかし,高温に遭遇すると花粉の成熟が阻害されて,柱頭に落下するはずの花粉が葯の中にとどまり,受粉と受精に障害が生じます.

イネの受精

これはイネの花の柱頭の写真です.めしべの先端が花粉を受け取る柱頭ですが,イネではめしべの先端は2つに分かれて,柱頭を形作ります.柱頭はほうきやブラシのような形をしています.この形は風媒花の特徴で,風で飛んできた花粉が柱頭に付着します.しかし,栽培イネでは自家受粉が普通なので,柱頭の上にある葯が割れて花粉が重力で落下して,毛のようになっている柱頭の先に付着するのが一般的です.柱頭に付着した花粉は発芽して花粉管を伸ばしていきます.開花期に高温障害が起こると柱頭に付着する花粉の数が減ったり,付着した花粉の発芽率が下がったり,発芽した花粉管が伸長しなかったりして受精が妨げられます.

出雲市の大規模アズキ栽培

宍道湖の西の湖畔にある島根県出雲市平田地区では水田の排水を強化し,水田だけでなく,畑としても利用できるように整備中です.整備後の計画ではアズキの栽培が組み込まれています.しかし,アズキは湿害に弱い,すなわち畑の土が非常に湿った状態になると生育が極めて悪くなり,収穫量が大きく減ってしまいます.そこで現在,湿害に強いアズキについて栽培方法や品種などの方面から研究を行っています.

アズキの湿害の研究

湿害に強いアズキ品種を探索する方法として多数の品種のアズキをポットで栽培し,写真のように水を入れた灰色のコンテナの中にある程度まで成長したアズキ(ここでは開花し始めた頃)をポットごと投入して比較実験を行っています.