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- 強相関電子系における電子の自由度
- バンド絶縁体では電子のスピン自由度は表に現れませんが,Mott絶縁体ではスピン自由度が顔を出すようになります.椅子取りゲームの譬え話のように,Mott絶縁体では隣り合う電子のスピンは互いに反対向きになる傾向を持ちます(反強磁性的相互作用).
- 特に,譬え話で挙げた椅子の配置に対応する格子構造では,全ての隣り合う電子のスピンが互いに反対向きとなる反強磁性状態が実現することになります(空間の次元数など,実際の量子力学的な基底状態を決定づける要因は他にもありますが,ここでは細かい議論は省略しました).
- 元々,電子間斥力(Coulomb斥力)は,スピン自由度に関係なく,電荷の間に等しく働くものですが,電子間斥力の効果が大きい系では,スピン自由度が顔を出し,Pauliの排他律との兼ね合いで,スピン間の相互作用を生み出すのです.
- 電子間斥力の効果(相関効果)が強い系は,広く,強相関電子系と呼ばれていますが,Mott絶縁体は典型的な強相関電子系の一つと言えます.強相関電子系においては,電子の電荷自由度とスピン自由度(時には軌道自由度)が複雑に絡み合って,特異な物性を示すことがあります.強相関電子系の代表的な例である銅酸化物高温超伝導体や重い電子系においては,磁性と超伝導との密接な関係が指摘され,現在も研究の対象となっています.