2.世界の油料作物生産
1990年と2000年の比較すると次のように油料作物の生産は大きく伸びています.
 アブラヤシ ( 1.9  )倍
 ナタネ   ( 1.6  )倍
 ダイズ   ( 1.5  )倍

世界的に見るとダイズとアブラヤシが2大油料作物です.ナタネ,ヒマワリ,ラッカセイをいれて,5大油料作物となります.

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第5回 油料作物(前編)

A.油脂と油料作物
1.あぶらとは何か
おおざっぱにいうと水に溶けない可燃性の液体を油と総称します.だから油と名の付くものは化学的には異なるいくつかの種類を含んでいます.車の好きな人にあぶらと聞けば,ガソリンを思いつくでしょうし,料理あるいは食べるのが好きな人は食用油脂を思いつくでしょう.この2つの油は化学的には別です.

鉱油・石油類は炭化水素です.炭化水素の説明

精油・芳香油(エッセンシャルオイル)という油もあります.

しかし,今回扱うものは油脂です.油脂とはグリセリンと高級脂肪酸のエステル化合物です.化学的構造は次のようなものです.
油脂のうち常温で液体のものは油(oil)といい,常温で個体のものは脂(fat)といいます.日本語ではどちらもあぶらですが,英語も中国語(漢字)も区別します.
油脂を構成する脂肪酸(上の構造式のR1,R2,R3に相当する部分)には多くの種類があり,その違いが油脂のさまざまな違いを生み出します.よくリノール酸,オレイン酸というのが食用油脂の話題に上りますが,リノール酸,オレイン酸はR1,R2,R3に位置します.
油脂を構成する脂肪酸の種類と植物の関係は以下の表の通りです.
リノール酸の多いものとしてはダイズ,トウモロコシ,ベニバナ,ワタなどが,リノレン酸の多いものとしてはナタネ,アマ,エゴマなどが,オレイン酸の多いものとしてはオリーブ,ナタネ,ベニバナ(オレインリッチタイプ)などがあります.最近はオレイン酸の多いオリーブ油が健康によいと評判です.ただしリノール酸,リノレン酸は人体内で合成不可能な必須脂肪酸ですから,実際にはオレイン酸,リノール酸,リノレン酸のバランスよい摂取が体にいいらしいです.この辺の学説はここ最近,急速に変わってきているのでわたしにはよくわかりません.
 工業的にも油脂は多量に使われます.身近な物としては石けんです.石けんには分子量の小さい脂肪酸から構成された油脂が低温でも泡立ちがよいので利用されることが多く,ココヤシから得るヤシ油とアブラヤシから得るパーム核油が代表的です.
 ほかにもペンキ用としては二重結合の多い脂肪酸を含む酸化しやすい油脂がペンキとしての乾燥が速いのでよく,亜麻仁油などが代表的です.
工業油脂に使う植物の解説
日本脂質栄養学会の提言 リノール酸とり過ぎへの警告です
植物油脂の中にはカカオ脂のように特異な脂肪酸構成をしているものがあります.カカオ脂はある温度までは固体なのに,ある温度になると一気に融解します.チョコレートはこの性質を利用しています.さらに体温に近い温度で融けるので座薬にも使います.
植物油脂とは直接関係ありませんが,魚の油脂は二重結合を多数もつ脂肪酸からできているので,油脂を取りだしたときに保存性がよくありません.そのため昔は食用には向かないと考えられていました.しかし,近年,このような魚の油脂に含まれる脂肪酸であるドコサヘキサエン酸などが健康によいことがわかってきました.
2.人間生活と油脂の関係をみましょう.
(1) 食品としての油脂としての役割は多数あります.
エネルギー源として 炭水化物( 4kcal )に対して,( 9kcal )と高い熱量があります.しかも炭水化物はビタミンB群を必要としますが,油脂(脂肪)は必要としません.
油脂は細胞構造と膜の機能に必要です.
細胞構造のための必須脂肪酸( リノール酸 ),( リノレン酸 )およびプロスタグランジン合成源として必要です.
脂溶性ビタミン(ビタミンA,D,E)の媒介物として油脂の摂取が有効です.
血中脂質調節にも機能します.

(2) 工業用としてもいろいろな利用があります
石けん,洗剤,界面活性剤となります.
  ( ココヤシ ),( アブラヤシのパーム核油 )の油脂がよく利用されます.低温でも泡立ちがよいからだそうです.

ペンキ,インク,油紙にもなります.この場合,脂肪酸に二重結合が多く,酸化しやすいものが適しています.つまりヨウ素価の高い乾性油が適します.アマやエゴマの油がそれに相当します.

逆に酸化しにくい油である椿油は古来,日本では髪につける油として利用されてきました.

(3) 現在の利用の様々
食用油 サラダ油,天ぷら油
油脂加工品 ショートニング,マーガリン,マヨネーズ,ドレッシング,粉末油脂
カカオ脂 チョコレート,医薬品(座薬)
工業用 石けん,洗剤,界面活性剤,ペンキ,インクなど

このようにいろいろと植物油脂は利用されます.
3.油利用の歴史
むかしは食用としてよりも主に灯火としての利用されました.江戸時代までは電気はおろかガスも石油も石炭も日本では利用されていませんでした.日本では魚油が行灯の燃料に使われましたがにおいが強いので,より高価な菜種油を使うことも多かったのです.
江戸時代のあんどんとろうそくのはなし
江戸時代のあんどんと魚油・菜種油
灯火の歴史
一方,江戸時代にはナタネを中心に植物油脂の生産が盛んになりましたので,油料理も普及していきます.といっても相当な贅沢品だったようです.このような食用にする油は灯火用と違い,食用に精製した油でした.
江戸時代にはナタネ油,そして綿実油が多く利用されました.
油脂利用における石けん,塗料などの工業的利用は石油などを利用した合成化学の発達によって,相対的な重要性は低くなりました.

一方,戦後,食生活の欧風化によって,食品としての油脂摂取量は増加し,重要度を高めました.

日本ではナタネ,ダイズから搾油した食用油がもっとも一般的に使われています.
4.油脂の抽出方法
搾油法 油を多く含む原材料に適します.ナタネ,ワタなどに利用します.

抽出法 油をそれほど含まない原材料(ダイズ)と搾油したあとの絞りかすに用います.
食用と非食用(工業用)の割合は,工業用は石油化学工業の発達のために割合が減りました.植物油脂の利用における相対的な重要性は食用の方が大きくなりました.

日本では輸入した( ナタネ )と( ダイズ )から大半の食用油が生産されます.
国産原料としては米油といって,米ぬかから抽出したものがある程度,生産されます.
油の歴史
江戸時代以前に搾油に使われた長木と江戸時代に使われたしめ木の絵
長木からしめ木への転換
江戸時代の天ぷらの話
主な植物油脂とその特徴
現代の油脂抽出方法 圧搾法と抽出法
植物油脂ができるまで(写真)
B.油脂の生産・消費動向
1.日本の油脂消費
日本は油料作物の大輸入国になっています.日本で実質的な自給原料は米ぬかだけです.ナタネ,ダイズを輸入して,日本で搾油するのがもっとも一般的ですが,近年,搾油された植物油脂そのものを輸入する事も増えています.これは収穫後,速やかに搾油しなければならないアブラヤシの油(パームオイル)の利用が増えた事などが一因です.
日本で搾油される原料についての統計
日本で流通している植物油脂の統計l
上の統計からもナタネとダイズが主に利用されていることがわかります.搾油原料ではダイズの方が多いのに,油ではナタネが多いのはダイズよりナタネの方が種子に含む油脂の量が多いからです.アブラヤシから搾油されるパーム油もかなり日本で消費されていることがわかります.あまり見かけないのは加工食品などでの利用と石けん・界面活性剤で利用され,一般家庭で使うことがあまりないからです.
さらに知りたい人は
参考文献
工芸作物学 栗原浩編 農山漁村文化協会
工芸作物学 西川五郎著 農業図書
工芸作物学 佐藤庚ら 文永堂
あぶら(油脂)の話 藤谷健 裳華房
食用油脂一般 食用油脂 太田静行 学建書院
油脂製品の知識 安田耕作ら 幸書房
       東京油問屋市場 http://www.abura.gr.jp/
       日本植物油協会 http://www.oil.or.jp/
世界有用植物辞典 平凡社
Ecophysiology of Tropical Crops Academic Press
世界の植物油脂生産統計
植物油脂の搾油工程(図)
サラダ油とは
いろいろある植物油の特性
パーム油の説明
 このような油料作物の急速な増加は,発展途上国の食生活が豊かになり,肉と油を使った料理をたくさん取るようになってきているからです.日本と同じように,いずれこのような国々でも炭水化物をとる作物(イネ,コムギ)の摂取が減り,油脂(ダイズ,ナタネ)と肉,その元になる飼料(トウモロコシ,ダイズ)の消費が大きく増えると見られます.モンスーンアジアでもっとも風土に適した,しかも環境への負荷の少ない水稲生産に今後,いかなる影響があるかは真剣に考えてみる必要があるでしょう.
ここにコメ需給の将来予測が詳しく述べられています.
要するに水稲を軸にしながらも,飼料と油料作物を組み合わせて生産する新しい作付体系を作る必要があるでしょう.コメに依存しすぎれば,おそらく将来,価格の暴落をみて,貧しい農村はますます荒廃しかねません.水田にアブラヤシを組み合わせるわけにはいかないでしょうから(研究している人がいるかもしれませんが),ナタネ,ダイズなどの油料作物,飼料イネあるいは雑穀を組み合わせることが必要なのかもしれません.
油脂 12:0 14:0 16:0 16:1 18:0 18:1 18:2 18:3 その他
紅花油 7 3 13 77 0
大豆油 10 4 24 54 8
コーン油 0 11 2 33 52 1
綿実油 1 20 1 2 19 57
キャノーラ油 4 2 58 22 11 20:1 2, 22:1 1
在来菜種油 3 0 1 17 16 10 20:1 9, 22:1 41
ごま油 9 5 39 46 0
こめ油 0 16 0 2 41 38 2
ひまわり油 7 4 18 70 1
落花生油 12 0 3 42 37 2 20:1 1, 22:0 3
オリーブ油 10 1 3 74 11 0
パーム油 0 1 43 5 41 10
つばき油 8 2 86 4 1
パーム核油 47 16 9 2 17 0 8:0 4, 10:0 4
やし油 47 18 10 3 7 0 8:0 8, 10:0 6
亜麻仁油 7 3 15 15 61
カカオ油 0 26 0 35 35 3
乳脂 3 11 29 3 11 24 2 1 4:0 3, 6:0 2, 10:0 3
豚脂 1 24 3 16 39 13 1
牛脂 3 27 4 18 41 3
まいわし油 8 17 9 2 13 3 1 20:5 17, 22:6 10
表1 主な油脂の標準的な脂肪酸組成%(炭素数:二重結合数)
名称
炭素数:
二重結合
分子式 融点℃ 多く含む油脂
カプリル酸 8:0 C7H15COOH 16.7 ヤシ油
カプリン酸 10:0 C9H19COOH 31.6 ヤシ油
ラウリン酸 12:0 C11H23COOH 44.2 ヤシ油,パーム核油
ミリスチン酸 14:0 C13H27COOH 53.9 ヤシ油,パーム核油
パルミチン酸 16:0 C15H31COOH 63.1 動植物油一般
ステアリン酸 18:0 C17H35COOH 69.6 動植物油一般
オレイン酸 18:1 C17H33COOH 13.4 動植物油一般
リノール酸 18:2 C17H31COOH -5.2 植物油一般
リノレン酸 18:3 C17H29COOH -11.3 亜麻仁油,大豆油
アラキドン酸 20:4 C19H31COOH -49.6 リン脂質
イコサペンタエン酸 20:5 C19H29COOH 魚油
エルカ酸 22:1 C21H41COOH 34.7 在来ナタネ油
ドコサヘキサエン酸 22:6 C21H31COOH 魚油
表2 主な脂肪酸とそれを多く含む油脂の関係
FAOの統計によりますと,1994年から2004の10年間で収穫面積が増加した作物上位10(ゴシック体は油料作物)は以下の通りです.
1.ダイズ 2865万ha
2.トウモロコシ 881万ha
3.アブラヤシ 457万ha
4.イネ 385万ha
5.ササゲ 334万ha
6.ワタ 308万ha
7.ラッカセイ 295万ha
8.ヒマワリ 291万ha
9.サトウキビ 278万ha
10.ナタネ 226万ha

日本の耕地面積は388万ha(2000年)ですから,ダイズとアブラヤシの栽培面積の増加に驚かれる方もいるでしょう.とりわけアブラヤシは南北緯10度以内が栽培適地ですから,熱帯雨林を伐採して,アブラヤシ畑にする勢いの強さを伺うことができます.
C.油料作物一般論
1.油料作物の特徴
人間が収穫対象とする植物の油脂は,植物にとっては種子の貯蔵物質です.
油脂は1gあたりのエネルギーが大きく,油脂 9kcal/gもあり,一方,炭水化物 4kcal/gです.ですから植物の貯蔵物質としてコンパクトにすむので,都合がよいと考えられます.

光合成産物である( グルコース )が種子に転流してからその中で油脂の合成が行われます.

2.油含有率の向上と組成の改良
ワタ,トウモロコシなど油が副産物であるときはあまり含油量は考慮されません.

品種改良と品種選択
ナタネではエルシン酸,グルコシノレートを含まない品種の育成が行われました.
ベニバナやヒマワリではオレイン酸リッチとリノール酸リッチとがあります.

リノール酸よりオレイン酸の方が酸化しにくいので,加工食品としてはオレイン酸を多く含む油脂が望まれ,オレイン酸を増やす育種が多いようです.

油脂収量を増やすには
  (  光合成  )→( 炭水化物 )→( 油脂 )
   できるだけ早期に(  葉面積  )を確保し,高い( 光合成速度  )を維持することがまずは大切です.この点はデンプン料作物,糖料作物と同じです.しかし,油脂は種子で合成されます.

 したがって,種子内で( 炭水化物  )から(  油脂  )への合成をいかに円滑に進めるかが問題となります.
 
  いくら光合成を花が咲くときまでたくさんしても,種子となるべき花数が不足したり,受精し損ねたりすると,収量は低くなってしまいます.窒素肥料をたくさん与えると,茎葉の成長が旺盛になり,花がたくさんつきますが,花の受精がうまくいかずに,たくさんの花が落ちるということもありますし,高温,低温,干ばつといった気象災害に見舞われたら,それまでの蓄積した炭水化物は花へ行くことができなくなります.

したがって,油料作物では種子ができる登熟期に好適な環境となるようにすることが大切です.
1.適切な品種(早生,中生,晩生)と播種時期の選択します.
 登熟期(種子が実る時期)に好適な環境(日射量が多く,気温,降水量とも適当となる)になるように開花時期を設定します.そのときに開花できるように品種と播種時期を決めます.


2.適切な栽植密度
(  面積当たり種子数   )を最大にする栽植密度にします.

  (  茎数=栽植密度×分枝数       )×(   茎当たり種子数     )

(  登熟期の光合成     )が最大になるような栽植密度にすることも大切です.
 この2つを最適にする栽植密度はたいていは一致しませんので,収量を最大にするために適切に調節する必要があります.

3.施肥
  油脂が合成され,収穫対象となる( 種子数  ),油脂の原料となる炭水化物を作る葉の大きさの指標である( 葉面積  )ともに( 窒素 )栄養の支配が大きいです.
D.油料作物各論
 油料作物には搾油を主目的に栽培する作物,副産物である種子から搾油する作物,胚芽から油脂を抽出する作物があります.

★ 搾油を主目的にする作物は,油脂の存在する部位から3種類に分けられます.
 種子油 種子から搾油するものです
  ダイズ,ラッカセイ,ヒマワリ,ナタネ,ゴマ,エゴマ,ベニバナなど

 果実油
  果実の果肉から搾油するものです.
  オリーブ,アブラヤシのパーム油

 核油
  ヤシ科の果実の中の種子の胚乳を搾油するものです.
  ココヤシ(その中のコプラ),アブラヤシのパーム核油

  搾油した後に残る搾油粕の利用もいくつかあります.
   一般的には家畜飼料とすることが多いです,ダイズでは種子の含油率はあまり高くない一方,タンパク質の豊富な搾油粕が出ますので,家畜の飼料として大豆粕はすぐれたものです.近年,ダイズ栽培の著しい拡大は油脂だけでなく,飼料としての価値が高いこともその理由に挙げられます.

   ナタネ,ワタなどでは肥料にすることもあります.とくにグルコシノレートを含むタイプのナタネから得た油かすは肥料とします. ワタの搾油粕もゴシポールという有毒物質を含むので,家畜に多量に与えることはできません.

   大豆粕は家畜飼料以外に,豆腐や醤油の原料ともなります.丸大豆なるものは品種ではなく,醤油や豆腐を作る際に大豆粕ではなく,大豆丸ごと使ったことを示します.

   油料作物は種子を収穫しますが,畑に残された茎葉は,緑肥としてすきこまれます.

★ 搾油は副産物である種子から行う(いずれも種子油)
 ワタ,アマ(ただしアマの場合は搾油のみを目的とする栽培もあります)

★ 胚芽から油脂を抽出する(胚芽油) トウモロコシ,コムギ,コメ

作物名

特性

含油率

(%)

脂肪酸組成(%)

(品種により異なり,一例)

リノール酸

リノレン酸

オレイン酸

ダイズ

安定性に劣り,酸化しやすい.わずかなダイズの風味とあっさりした感じのバランスが好まれる.

20

54

7

25

ナタネ

日本では戦国時代から使われた.くせがなく,あっさりしている.天ぷらに使うと油の個性を感じさせず,素材の味を引き出す.エルシン酸,グルコシノレートをほとんど含まない品種をカナダで育成し,canolaと名付けた.

35-50

23

 

10

59

ゴマ

特有の芳香は種子を焙煎してから搾油することによって生じる.安定性が極めて高い.天ぷらや炒め物に向く.

50

45

0

40

ワタ

繊維を取った後のワタの種子から搾油する.

15-25

57

0

19

イネ

米ぬかから抽出する.安定性が高い.加工食品(油であげたお菓子)に利用される.

15-21

(ぬか)

37

0

42

ヒマワリ

リノール酸を多く含むものから最近はオレイン酸を多く含む品種に移行しつつある.

40-45

70

0

19

トウモロコシ

淡泊な風味で安定性が高い.ドレッシングやマヨネーズなどに使う.

4

53

2

30

ベニバナ

あっさりしてくせがない.リノール酸を多く含むタイプとオレイン酸を多く含むタイプがある.

20-35

77

0

14

オリーブ

オリーブの実の果肉から搾油する.独特の芳香を持ち,地中海諸国の料理には不可欠な油である.オレイン酸が多いので,酸化しにくく,加熱にも強い安定した油.

55

13

1

70

アブラヤシ

(パーム油)

アブラヤシの果肉から搾油する.単位面積あたりの油脂生産量が最も高い.マーガリン,ショートニングなど加工用,天ぷらなどに利用する.

50-60

10

0

40

アブラヤシ

(パーム核油)

アブラヤシの種子から搾油する.ココヤシの油脂と性質が近い.石けんなどに利用する.

50-55

0

0

10

ココヤシ

ラウリン酸など分子量の低い脂肪酸を多く含みケン化価が高い.石けんなどに利用する.

60-65

3

0

6

ヒマ

水酸基を持ったリシノール酸を多量に含むので,医薬(下剤など),工業用に利用.インドが主産地.

40-60

0

7

0

アマ

リノレン酸が多いので,酸化しやすい不安定な油.塗料やインクに使う.

33-46

15

15

59

エゴマ

リノレン酸を多く含む.日本では江戸時代まではよく利用された.

45

25

15

50

ツバキ

オレイン酸が多く,安定性の高い油.日本では古来,頭髪用として利用した.

30-40

0

86

0

ラッカセイ

風味が豊かな油で中華料理でよく使う.世界的にはよく利用される油料作物である.

50

36

0

43

カカオ

特異な脂肪酸組成であり,体温に近い温度で融ける.油脂は座薬などに利用する.

50-54

0

0

38

表4 主な植物油脂とその特性
E.胚芽油
 胚芽油はビタミンEを豊富に含むなど健康面から注目されています.
 胚芽油はトウモロコシ,イネ,コムギなどから得られます.

コーン油
 コーンスターチを分離する際に胚芽を取り出し,その胚芽を搾油します.
 種子の油脂含量は4%程度ですが,胚芽そのものは30%以上の油脂を含んでいます.
トウモロコシ胚芽からは圧搾法と抽出法を組み合わせて搾油します.

米油
 玄米のうち,ぬかは10%程度です.ぬかは15から21%の油脂を含んでいます.
 抽出法で搾油します.
 米ぬかの酵素活性が強いので,精米後,速やかに油脂を抽出する必要があります.
 日本では年間およそ6.6万トンの米油が生産されています.
  加熱しても酸化しにくいのでスナック菓子製造などに利用されます.
戦後の食用油脂消費は以下のように生活の欧風化で大きく増加しました. 

表3 日本の食用油脂および脂肪摂取量の推移(g/日)

 

1960

1998

2003

油脂摂取量

5.7

14.0

12.3

 植物性油脂

5.1

13.1

11.4

 動物性油脂

0.6

0.9

0.9

脂肪総摂取量

24.7

57.9

54.0