C. 収穫作業,収穫後の調整や加工に適した場所
 多くの工芸作物にとって収穫時期の降雨は品質の低下につながるので好ましくありません
 例えば,ワタは水をたくさん必要とする作物である一方,収穫対象である実綿に雨がかかるのは品質を下げます.このことから日本のように秋の収穫期に雨が多い気候は品質のよいワタを収穫することを困難にします.
 あるいはナタネ,ゴマのような種子を収穫する作物にとって,収穫直前の雨は穂発芽(植物に着いた状態で種子が発芽すること)を起こし,品質,収量ともに大きく低下することも起こります.種子を収穫する作物は太陽エネルギーが豊富な方が収量が多くなる一方で,収穫時期にはあまり雨に当たらないことが要求されます.

 収穫後の乾燥が重要な作物もあります.乾燥機がなかった時代には収穫後の降雨で天日干しの収穫物がだめになることもありました.タバコなどは乾燥が大切な作物です.イグサはかつては刈り取りの後,泥染めをし,天日乾燥しました.このときの降雨は品質を低下させたのでしたが,現在は乾燥機で乾燥させます.

 麻類(チョマ,アマ)の場合, 茎の繊維の精錬に多量の水が必要です.河川,湖など水を確保できないと収穫物の加工ができないのです.

 こういった加工ができることも工芸作物の栽培に大きく関わってきます.

第2回 適地適作

A.農業と自然環境

表2 工芸作物の種類と分類(続き)

和名

漢字名

学名

英語名

収穫器官

ゴムおよび樹脂料作物(rubber, gum, and resin crops

パラゴム

 

Hevea brasiliensis Muell. Arg.

para rubber

幹(樹液)

アラビアゴム

 

Acacia senegal Willd.

gum arabic

幹(樹液)

ウルシ

Rhus verniciflua Stokes

Japanese lacquer tree

幹(樹液)

芳香油料作物(essential-oil crops

ラベンダー

 

Lavandula officinalis Chaix.

lavender

バラ

薔薇

Rosa spp.

rose

香辛料作物(spice crops

ショウガ

生姜

Zingiber officinale Rosc.

ginger

根茎

ワサビ

山葵

Wasabia japonica Matsumura

wasabi

根茎

トウガラシ

唐辛子

Capsicum frutescens L.

red pepper

果実

コショウ

胡椒

Piper nigrum L.

pepper

果実

チョウジ

丁字

Eugenia caryophyllata Thunb.

clove

花蕾

ニクズク

 

Myristica fragrans Houtt

Nutmeg

種子

染料作物(dye crops

インドキアイ

 

Indigofera anil L.

indigo plant

アイ(タデアイ)

Polygonum tinctorium Lour.

Chinese indigo

ベニバナ

紅花

Carthamus tinctorius L.

safflower

薬料作物(medicinal crops

オタネニンジン

人参

Panax ginseng Meyer

ginseng

ハッカ

薄荷

Mentha arvensis L.

Japanese mint

ジョチュウギク

除虫菊

Chrysanthemum frumentacea Makino

insectpowder plant

1.作物と自然環境
 生物が育つためには(物質(養分,栄養分))と(エネルギー)が必要です.


 植物は(エネルギー)を太陽の光から得ています.
C.工芸作物における産地の移動
1.工業化の程度と工芸作物
 工芸作物は加工を必要とする作物なのである程度の工業化が進んだ国の方が栽培がさかんです.
(2)油
オリーブ油はオレイン酸が豊富で健康によいという宣伝です.

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参考文献
工芸作物学 栗原浩編 農山漁村文化協会
作物学各論 石井龍一ら著 朝倉書店
工芸作物学 西川五郎著 農業図書

表2 工芸作物の種類と分類

和名

漢字名

学名

英語名

収穫器官

繊維料作物(fiber crops

ワタ

棉(綿)

Gossypium spp.

cotton

種子(綿毛)

アマ

亜麻

Linum usitatissimum L.

flax

茎(靭皮)

チョマ

苧麻

Boehmeria nivea Gaud.

ramie

茎(靭皮)

タイマ

大麻

Cannabis sativa L.

hemp

茎(靭皮)

ケナフ

 

Hibiscus cannabinus L.

kenaf

茎(靭皮)

コウマ(ジュート)

黄麻

Corchorus capsularis L.

jute

茎(靭皮)

マニラアサ

 

Musa textilis Nee

abaca, Manila hemp

サイザル

 

Agave sisalana Perrine

sisal

イグサ

Juncus decipiens Nakai

rush

シチトウイ

七島藺

Cyperus malaccensis Lam.

Chinese mat grass

コウゾ

Broussonetia papyrifera Vent.

paper mulberry

ミツマタ

三椏

Edgeworthia papyrifera Sieb. et Zucc.

 

油料作物(oil crops

アマ

亜麻

Linum usitatissimum L.

flax

種子

エゴマ

Perilla frutescens Britton

perilla

種子

ヒマワリ

向日葵

Helianthus annuus L.

sunflower

種子

ベニバナ

紅花

Carthamus tinctorius L.

safflower

種子

ダイズ

大豆

Glycine max Merr.

soybean

種子

ワタ

棉(綿)

Gossypium spp.

cotton

種子

ゴマ

胡麻

Sesamum indicum L.

sesame

種子

ナタネ

洋種菜種

Brassica napus L.

rape

種子

ナタネ

在来種菜種

Brassica campestris L.

rape

種子

ラッカセイ

落花生

Arachis hypogaea L.

peanut

種子

オリーブ

 

Olea europaea L.

olive

果実

アブラヤシ

油椰子

Elaeis guineensis Jacq.

oil palm

果実,種子

ココヤシ

ココ椰子

Cocos nucifera L.

coconut palm

種子(果実)

糖料作物(sugar crops

サトウキビ

甘蔗

Saccharum officinarum L.

sugar cane

テンサイ

甜菜

Beta vulgaris L.

sugar beet

サトウカエデ

砂糖楓

Acer saccharum Marsh.

sugar maple

幹(樹液)

デンプンおよび糊料作物(starch and paste crops

サツマイモ

甘薯

Ipomoea batatas Lam.

sweet potato

塊根

ジャガイモ

馬鈴薯

Solanum tuberosum L.

potato

塊茎

キャッサバ

 

Manihot esculenta Crantz.

cassava

塊根

コンニャク

蒟蒻

Amorphophallus konjac Koch.

konjak

球茎

トウモロコシ

玉蜀黍

Zea mays L.

maize

種子

嗜好料作物(stimulant crops

チャ

Camellia sinensis (L.) O. Kuntze

tea

コーヒー

珈琲

Coffea spp.

coffee

種子

カカオ

 

Theobroma cacao L.

cacao

種子

ホップ

 

Humulus lupulus L.

hop

タバコ

煙草

Nicotiana tabacum L.

tabacco

F.いろいろな工芸作物
  収穫対象と目的器官による分類(表1)
  いろいろな工芸作物(表2)の紹介

1 工芸作物は収穫目的物とそれを収穫する器官から分類できる

目的器官

種類

花または

子実

地上部

地下部

繊維料

 

ワタ 

マニラ麻
サイザル 

アマ,チョマ,
タイマ 

 

 

紙料

 

 

 

コウゾ
ミツマタ 

 

 

敷料

 

 

 

イグサ
シチトウイ

 

 

油料

 

ダイズ,ゴマ
ワタ,ナタネ
アブラヤシ 

 

 

 

 

嗜好料

 

コーヒー
カカオ 

チャ
タバコ 

 

 

 

糖料

 

 

ステビア

 

サトウキビ 

 

テンサイ 

デンプンおよび糊料

 

トウモロコシ

 

 

ジャガイモ
コンニャク

サツマイモ
キャッサバ 

イグサの泥染めの様子
自給自足経済→農産物を輸出する貿易立国→工業国
D.いろいろな工芸作物
 食用作物はイネ科(イネ,コムギ,トウモロコシ),マメ科(ダイズ,インゲンマメ),ナス科(ジャガイモ),ヒルガオ科(サツマイモ)など限定された科のうちしかも少数の作物に限定されるのに対し,工芸作物は同じデンプンをとる作物でもトウモロコシ,ジャガイモ,サツマイモ,キャッサバ,サゴヤシなどいくつかあり,油を取る作物はイネ科(トウモロコシ,イネ),マメ科(ダイズ,ラッカセイ),ヤシ科(アブラヤシ,ココヤシ),キク科(ヒマワリ,ベニバナ),アブラナ科(ナタネ),ゴマ科(ゴマ),シソ科(エゴマ),モクセイ科(オリーブ)とあり,あまり共通するところのないいろいろな科の種々の作物が油料作物になっています.このようにいろいろな工芸作物があるのはどうしてでしょうか? 同じものを取り出すのになぜいろいろな工芸作物があるでしょうか?
  同じデンプンを得る場合でも,気象・土壌などの違いに対して適切な作物を選択していることがあります.
  さらに同じ成分でも品質が異なることがあります.

1.同じ成分といっても
(1)デンプン
 ひとくちにデンプンといっても日本古来から使ってきたカタクリ,クズ,ワラビの3つのデンプンでも粘りの強さ,色などが異なるようにジャガイモ,サツマイモ,キャッサバ,トウモロコシのデンプンは理化学性が異なります.写真で見るとデンプンの粒が大きく,丸いジャガイモデンプンに対し,トウモロコシデンプンは小さく,四角いかんじです.(写真はリンク先で探してください)
 このようなデンプンの形の違いなどで物理性が異なり,水に溶いて,温度を上げていくと,ジャガイモデンプンは低温から粘度が高まり,粘りが強いのに対して,コーンスターチは高温にならないと粘らず,しかもあまり粘度は高くありません.よく料理する人ならジャガイモデンプンからできた市販の片栗粉とコーンスターチの違いを区別しているはずですからわかるでしょう.
ジャガイモデンプンとカタクリデンプンを比較して,デンプン粒子の写真と粘度を調べたページです
ここではデンプンの粘りとかたさを比較したグラフがあります.
 ここでは油といっても食用油脂の違いです.油には石油類などもありますが,化学的には食用油脂とは異なるものです.しかし,食用油脂もそれを構成する脂肪酸の組成割合がいろいろな作物で異なります.
 オリーブ油が健康によいと最近ブームになっています.オリーブ油はオレイン酸が豊富に含まれています.一方,20年くらい前だとリノール酸ブームでしたが,今ではオレイン酸,リノール酸,リノレン酸を適当なバランスで摂取するのがよいらしいです.リノール酸は植物油脂に多く含まれるのであまり意識しなくても不足はしないので,オレイン酸を摂取せよということのようです.(学説がころころ変わるのでなんとも確信が持てませんが)
検索サイトでオレイン酸,リノール酸と入れればいくらでも出て来ますが,ここでは2,3リンクをあげておきます.
必須脂肪酸であるリノレン酸の説明です.
必須脂肪酸であるリノール酸の説明です.
 このように食用油脂の組成は植物によって異なります.といってもたいていの国ではその国の風土(気候,土壌などを総合したもの)に合った作物をおもに栽培して,植物油脂を得ます.ロシア,ウクライナ,アルゼンチンはヒマワリからというように.
(3) 繊維(セルロース)
 いろいろな植物から人類は繊維を得てきました.日本では古来はタイマから繊維をえていました.
 植物繊維の中でも綿はもっとも優秀な繊維だったので,旧大陸でも新大陸でも独立に数種のワタ作物が栽培植物となりました.
 このようないろいろなワタでも,繊維の長い方が品質が優れています.
 おおむねインド<アメリカ<エジプトのワタほど繊維が長くなり,品質が優れています.
ワタについての解説
作物をとりまく栽培環境
 作物は生きていくために必要な物質とエネルギーを周りの環境から得ています.さらに周りの環境は作物が必要な物を与えるだけではなく,生育をむしろ阻害するような影響も作物へ与えます.このような作物を取り巻く栽培環境を大まかに分類すると,物理環境,化学環境,生物環境の3つにわけることができます.
( 物理 )環境
 日射量,日長,降水量,気温,湿度,地温,風,土壌水分などが物理環境に相当します.
 太陽エネルギー,降水量,気温などは人為的にはほとんど変えることはできません.
 しかし,土壌水分などは人為的に変えることができます.さらに遮光,防風林などによって部分的に
物理環境を改善することもできます.
( 化学 )環境
 土壌の無機養分,有機物,pHなどは化学環境です.ときに酸性雨なども化学環境に入れることがあります.
( 生物 )環境
 雑草,病原菌,害虫,鳥,土壌微生物などが生物環境です.必ずしも作物に対して有害であるとは限りません.複数の作物を同時に栽培する混作では他方の作物も生物環境に入れることができます.
 栽培環境はどのような作物を栽培するかを決定する上で大きな影響を及ぼします.
 温度,降水量などがどの作物を栽培するかを決定する上で大きな影響のあることはいくらでも例を挙げることができます.さらに酸性の土壌に適した作物(ブルーベリーなど),気象条件は好適であっても葉サビ病があるためにアラビカ種のコーヒーの栽培が困難な地域のあるコーヒーなどはそれぞれ化学環境,生物環境が作物を決定する上で大きな影響を与える例です.
 さらに人間自身が栽培環境を変えることもできます.例えば,水田を造成することはその一例です.
2.日本の自然環境
 日本は南北に長いために,気温の差が大きい.さらに国土の中央を南北に高い山脈が走るために降水量の差も大きく,しかも夏冬の降雨パターンも地方によって異なる.
(質問) 北海道地方,北陸地方,東海地方,九州地方それぞれの気象(気温,降雨パターン)の違いとそこで栽培される作物の関係を考えましょう.
 さらに気象だけでなく,土壌についてもいろいろな土壌があります.
 例:長野県の果樹栽培
 リンゴは弱酸性で乾燥した土壌を好みますが,ブルーベリーは酸性で保水力のある土壌を好みます.そのため長野県では平坦部でリンゴを栽培し,標高の高い,霧の発生しやすい酸性の強い火山灰土地帯でブルーベリーを栽培します.
3.環境の人為的な調節
 トマトの雨よけ栽培 降雨を遮ります
 かぶせ茶 チャは光を遮ると品質が向上します
このようにして,作物の生育に適した環境を人間が作ることもあります.
B.適地適作
適地とはその作物に適した場所に植えること,適作とはその土地に適した作物を栽培することです.適地適作というと漠然としているかもしれません.現在,農業もグローバル化が進み,食用作物であるイネ,コムギ,ダイズなども商業ベースでの栽培ではその土地に適した作物を栽培しなければならないでしょう.しかし,自給自足経済からやや進んだ段階(日本でいえば江戸時代)においては自給作物である米,麦以外に換金作物を栽培することが多くなりました.この場合,どんな作物をどこに植えるかは大きな問題でした.
1.なぜ適地適作なのか?
換金作物である
生活必需品ではない,あるいは必需品を作るための作物であってもそのままでは利用できないものはいったん換金するか,農家自ら加工した後,換金する必要があります.経営において最適な作物を選択し,自分の持つ農地のうち最適のところに栽培することによって,得られる収入を最大にすることができます.
品質を重視する
 工芸作物は品質を重視されることがふつうです.特に嗜好料作物では高い品質の収穫物が驚くような高い値段になることは,できあがった製品である茶,コーヒー,タバコなどの高級品がきわめて高価に取引されることからも推察できます.高品質な収穫物を得るためには風土に適した工芸作物を選び,品種,耕種栽培方法,収穫方法,収穫後の保存,加工など種々の技術を総動員し,最適に組み合わせる必要があります.とくに栽培する風土は人為的にはほとんど変えることができません.
 工芸作物で高い品質の収穫物が得られる例をあげると・・・
 ワタ カイトウメンという種のワタをカリブ海の西インド諸島で栽培したときに得られる長繊維のワタ
 チャ ダージリン
 コーヒー ジャマイカのブルーマウンテン
加工施設が必要である
 工芸作物の多くは収穫後に速やかな加工が必要なものが多く,しかも収穫物に比べて,生産物の量が少なかったり,あるいは収穫後に急速に分解などが進んだりするものがあります.例えば,油脂を搾油するアブラヤシでは収穫後に果実の含む酵素のために油脂が分解していきますし,ハッカは収穫した茎葉に対して収穫されるハッカはごくわずかです.このような場合,栽培する畑の近くに加工施設があることが必要です.さらに加工施設はある程度以上の収穫物を処理しないと採算があわないので,まとまった栽培面積を確保する必要があります.適地でない作物ではまとまった栽培面積を確保するのは難しくなってしまいます.
2.適地適作を科学的に考える
(1) 対象となる器官で考える
A.地上部と地下部のバランス
 光合成する葉を収穫する作物(チャ,タバコ),根を収穫する作物(テンサイ,キャッサバ),地下茎を収穫する作物(コンニャク,ジャガイモ),茎を収穫する作物(イグサ,サトウキビ)などに分けて考えることができます.
 根を収穫する作物の場合,地上部をいくら大きくしても根が大きくならなければ収量は多くなりません.窒素などの施肥方法,水のやり方などを工夫して,地上部と地下部の比率を変えることができます.
 コンニャクでは生育の前半に肥料を十分に与え,後半に肥料の吸収を抑制してやると,地下部(球茎)の収量が増えます(黒田 1979).コンニャクは地下部(球茎)に光合成産物を蓄えます.最初は光合成をさかんにするために(  葉   )を増やします.すなわち(  窒素  )を十分に与えます.後半は,(  窒素   )を減らし,光合成産物を地下部へ移行させます.
B. 収穫対象となる成分で考える
気象などの栽培条件と品質
 温度や土壌
  同じように葉を収穫する作物でもチャは葉の窒素含量が高い方が品質が高く,タバコは低い方が好ましい.したがって,土壌を選ぶ際にこの点は重要です. 
タバコの成分
 タバコのうち,黄色種では成熟にともない,窒素を落とし,炭水化物を増やすが,バーレー種では窒素も炭水化物も減らしていきます.
チャの品質と栽培環境
 チャを遮光してやることによって,収穫物である葉の窒素含量が高まり,品質が向上します.
現在はほとんどの世界が市場経済に結びつけられたので,発展途上国のほとんどでできる限り有利な工芸作物を選択して栽培するようになっています(歴史的には植民地化の影響も大きい).
 一方,工業化が進むと工芸作物を栽培するより輸入する方が有利になります.日本では明治時代にはワタの栽培が激減する一方で,繊維工業は大きく発達しました.最近ではマレーシアは天然ゴムの栽培を急速に減らして,アブラヤシに転換しています.アブラヤシは搾油して油を輸出できますが,ゴムの最終消費地は自動車工業の発達した国になるので加工を考えるとアブラヤシの方が有利かもしれません.
2.産地の変遷
 病虫害
  かつてセイロン島やインドネシアではアラビカ種のコーヒーが栽培されていました.しかし,ヘミレイア菌による葉サビ病のためにセイロン島では紅茶に,インドネシアではアラビカ種から,品質は劣るが,より耐病性の強いロブスタ種のコーヒーに転換しました.
土地の養分の収奪・砂漠化などの栽培環境の劣化
 中央アジアではアムダリア,シルダリアの両河川からの灌漑水で大規模な綿作地帯が形成されましたが,アラル海の縮小に代表されるように自然環境が大きく損なわれ,畑の一部も塩害などで放棄されるようになりました.
その他社会事情
 イグサは日本の畳文化と結びついた作物でしたが,より低コストで栽培できる中国で栽培されるようになり,日本での栽培は減少してしまいました.

日本における工芸作物の産地の移動の一例(以下の記述は主に明治農書全集第5巻特用作物 解題を参考にしました)

 換金作物は売れないと困るので品質が重視されます.自給作物であればたとえ味が劣っていても我慢して食べればよいということですみますが,換金作物はいくら努力したところでできたものの,質が売り物にならなければ所得にならないわけです.
 したがって,農家は自分の農地にあった作物を選び,それに対して高い栽培技術を習得するように努め,耕作に努力することによって高い収入を得ようとします.

江戸時代末から明治時代初めにかけてワタの産地が移動しました

江戸時代,畿内がワタの主産地となりました.日本の気象はもともとワタには適していません.日本で栽培されたキダチワタは原産地がインドであり,高温かつ多照な気象条件を必要としました.日本では高温の得られる期間が短かったのです.そのため地温が上昇しやすい砂地でワタを栽培しました.しかし,砂地は肥料を十分に与えないとワタの生育を十分にできません.ワタの栽培には日本の条件を満たす品種(多収,耐肥性品種),施肥技術(追肥),栽培技術(施肥効果を高める摘心,摘芽)を必要としました.したがって,経済的に先進地帯であった畿内でワタの栽培が発達しました.
 しかし,ワタ栽培が全国的に普及するようになり,ワタの価格が下落し,一方,商品作物栽培が全国に広がると肥料の価格は高騰します.そのため畿内でのワタ栽培は後退し始めます.
 島根県東部の出雲地方は江戸時代の後半からワタの栽培が進展します.隠岐,日本海沿岸,中海などから安価な肥料である海藻(ほんだわらを中心とした海藻)を肥料として低コストのワタ栽培を進めることによって高い競争力を得たのでした.畿内では高価な魚肥を主に用いていました.日本海には暖流である対馬海流が流れ,海底が岩礁でありましたので,海藻がよく繁茂します.藻の利用は低コストな綿作を進めたばかりでなく,藻が商品となることによって海岸の住民にも収入をもたらしました.

日本の気象庁に四季の気象のデータがあるますので,それをみて考えてみましょう.
このリンクにも日本の地方による気候の違いを簡単に説明してあります
トマトの雨よけ栽培
かぶせ茶について

生殖器官を収穫する作物:ワタ,ダイズ,ナタネ,ホップ,コーヒー,トウモロコシなど
葉を収穫する作物:マニラ麻,チャ,タバコなど
地上茎を収穫する作物:アマ,チョマ,コウゾ,ミツマタ,イグサ,サトウキビなど
地下茎を収穫する作物:コンニャク,ジャガイモなど
根を収穫する作物:テンサイ,キャッサバ,サツマイモなど

岡山県倉敷のイグサ栽培とイグサ加工業の発展の歴史

岡山県倉敷のように,花筵(錦莞莚)という輸出できる工芸作品の登場がイグサ栽培を発達させた例もあります.

錦莞莚を作った磯崎眠亀について
★ 土壌の中に窒素が多いと・・・
葉緑素の原料の一つが(   窒素   )ですから,光合成を増やすために(  葉  )がより展開します.一方,相対的に(  根  )は少なくなります.

★ 土壌が乾燥していると・・・
 土壌の深部にある水分を吸収するために(  根   )が発達します.蒸散で失われる水を減らすために(  葉   )は相対的に少なくなります.

★ 光が弱いと・・・
 上に伸びて光を得ようとするので,(  茎   )が伸び,(  葉   )は薄くなります.
 (  根   )は相対的に少なくなります.