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研究:土壌生態系を利用した水質浄化技術の開発

Water Purification

土のチカラ

 「土」と聞いて初めに思い浮かべることは何だろうか。土は母なる大地といわれるように生命が生み出される場でもあるが、また生命が還る場でもある。土には多種多様な微生物がすみ、彼らが生物の遺体や排泄物などを分解して生態系での物質循環をつかさどっている。

多段土壌層法とは

 多段土壌層法は汚水浄化機能を強化した改良土壌をレンガ積層状に配置し、周囲に通水性の良い粒子径の比較的均一な資材を充てんした構造を持つ。(写真)そのため土壌の汚水浄化機能を保持しつつ、従来の土壌浄化法の問題点であった目詰まりや、一部の間隙のみに水が流れる短絡に対して有効で、高速処理が可能になっている。改良土壌にはベースとなる土に木炭や鉄などを混合することで有機物や湖沼などで富栄養化の原因となっている窒素やリンの除去能力も強化することができる。また土壌ブロック間の通水性資材にアンモニア吸着能の高いゼオライトを使用すると窒素除去を強化することができる。

 浄化に使用した資材は腐植、窒素やリン酸その他の栄養素に富む肥沃土になっており、これを農地還元することによって以前行われていた人間と土との循環系を再生することができる。 現在、この多段土壌層法を使用して、一般家庭の浄化槽や下水処理場からの排出水の高度処理、公衆トイレの排水処理を行っている。又、福岡県飯塚市熊添川や島根県隠岐郡宇屋川などで、汚濁河川水の高速処理、超高度浄化(親水用水化)を行っている。タイ・インドネシアのような発展途上国においても、排水処理、河川浄化の研究を行っている。

これから

 土にはさまざまなサイズのすきま、水の多い所や少ない所、酸素が多い所少ない所、そして多様な物質が存在しており、浄化の主役となる微生物は、このいろいろな形の「住みか」と「えさ」によって土の中に多種多様に存在している。一グラムの土壌団粒には4000~8000種(ゲノム)、一億個以上の微生物が活動している。

 高い浄化能力を得るには「住みか」と「えさ」という微生物にとっての環境づくりが必要になってくる。具体的には土壌資材の選択、構造、土壌に空気を送るなどの多段土壌層法のような物理化学的な制御により生物性(微生物)を制御することが重要であると考えている。

 今は、土は複雑でよく分からないものという認識が強い。しかし、そのメカニズムを解明し、制御することによって、土による水質浄化という環境調和型技術の開発を目指して研究に取り組んでいる。

<関連文献>

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