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研究:耐塩性樹木(Tamarix sp.)が周辺土壌の理化学性に及ぼす影響(メキシコ、バハカリフォルニア州)

 メキシコ、Baja California半島において、耐塩・耐乾性の強い樹種であるTamarix sp.は圃場の境界や街路樹などとして使われている。

 本研究ではTamarix sp.が養分吸収や落葉落枝を通して周辺土壌の化学性に及ぼす影響について調査を行っている。

 2004年に予備調査としてBaja California州Guerrero Negro北の現地農家の圃場内に孤立し、周辺植生の影響のないTamarix1個体を対象として、幹から1.3-1.8mの地点で4カ所、3.6mの地点で1カ所(樹冠内)、樹冠外4地点より表層0-5、5-15cmの土壌(樹冠内外より各1地点は0-40、0-50cm)を採取し分析(pH,EC,水溶性塩類,交換性塩基)を行った。

 樹冠下における土壌0-5、5-15cmの平均pH,ECは幹から1.8m地点でそれぞれ8.37、8.34と6.28、4.21 dS/m,3.6m地点で8.39、8.45と2.58、2.40 dS/mであった。樹冠外の地点における平均pH,ECは同上の順で、9.31、9.22と0.45、0.47 dS/mであった。樹冠下において樹冠外よりも土壌pHは低く、ECは高くなっていることが示された。樹冠内外の各地点で0-5、5-15cmに大きな差は無かった。しかし、樹冠内の地点でも下層土20-50cmのECは0.36-0.69dS/mと樹冠外の表層土壌との差は小さかった。樹冠内では落葉落枝が部分的な分解を受けた状態で数cm堆積しており、落葉落枝からの有機物や塩類の供給により土壌のpH、ECが変化したことが推察された。土壌中の塩類組成と集積について、表層土壌中の水溶性塩類が樹冠内で集積していた。0-5cm土壌中のCa,Mg,Na,K含量は樹冠内で73, 89, 121, 55 cmolc/kg、樹冠外で2.5, 1.1, 14, 5 cmolc/kgであった。この結果は、Tamarixが根域あるいは周辺土壌より塩類を吸収し、樹冠下の土壌表層に塩類を集積していることを示唆している。

 本研究では、調査地域においてTamarix sp.が周辺土壌や植生に及ぼす栄養生態学的な研究が目的の一つである。そして、調査地域に広範に分布するアルカリー塩類土壌の農業利用のためには、土壌に集積した塩類の植物への害を低減するために、有機物施用や塩類の除去などの土壌改良が必要となる。そこで、Tamarix sp.をはじめとする耐塩性植物を活用した土壌改良(リターによる有機物供給や土壌中塩類の除去)の可能性を評価することが、二つ目の目的である。

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