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研究:熱帯雨林の樹木多様性と土壌(西スマトラ熱帯雨林における樹木と土壌の無機栄養特性)

 熱帯雨林には1haの面積に200-300種を越える樹木種が共生する。森林生態系において土壌と樹木は水や養分などの資源の分配・移動を通して相互作用を及ぼしている。この多種共存を支える要因及び機構の解明を樹木と土壌の栄養特性という視点から試みている。これまでに西スマトラ熱帯雨林に設置された調査プロットを対象に研究を行ってきた。

(1)樹木の栄養特性

 樹木の葉あるいは樹皮の分析結果より、種の多様性と同様にその栄養特性も多様であること、そして特徴的なこととして、葉及び樹皮中ともにAlの平均濃度が多量必須元素であるS、Mg、Pと同レベル以上であったことが挙げられる(表1)。このことは、活性Al濃度の高い酸性土壌環境下において多数の樹木が高濃度にAlを集積していることを表している。(本調査地の土壌pH(H2O)は4前後である)。そして、中にはHyper Accumulatorと見なされる種もあり、葉中Al濃度の最高値はRubi. Mschalocrymbus corymbosusの37g/kgであった。

(2)土壌中養分状態と樹木種分布の関係

 調査地内の土壌中(表層0-15cm)養分濃度及び分布と樹木種の分布を比較解析した結果、調査地内において土壌肥沃土が低くかつ養分分布濃度の変動が大きい場所において樹木種数が大きくなる傾向が認められた(表2、図1)。この結果は、土壌養分環境の不均一さが多様な栄養特性を持つ各種樹木に見合う養分ニッチェを提供し、多種樹木共生機構の一要因として寄与していることを示している。

 では、この土壌養分環境の不均一さは何によって生み出されるのであろうか?




(3)土壌養分環境の不均一さ(多様さ)を創造する要因

 土壌養分環境に影響する要因として、樹木による養分循環がある。上記の西スマトラ熱帯雨林に設置された生態調査プロット内に115のサブプロット(10m×10m)より成る1haの調査プロットにおいて、リタートラップ、樹冠流・林内雨採取器を設置しリターと降雨による養分フラックスの小空間分布と樹木構成や土壌化学特性の関係を調査した結果、この熱帯多雨林において樹木の種多様性は、リターフォール、樹冠流、林内雨による養分循環を通して、土壌中の肥沃土レベルの向上よりもむしろ、その土壌中養分環境の変動、すなわち多様な土壌養分ニッチの創造に寄与していることが示された(図1)。

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