Research

 

層状複水酸化物が示す陰イオン交換特性の解明

CO2排出量削減

 

無機陰イオン交換体として知られる層状複水酸化物(Layered Double Hydroxide:LDH)は,水中の有害陰イオンを除去するための水処理材料として期待されているが,実際に利用するためには様々な有害陰イオンに選択性を示すLDHが必要になります.これを実現するためには,LDHの陰イオン交換特性,特に陰イオン選択性の発現機構を十分に理解し,それを制御するための因子を明らかにする必要があります.私たちの研究室では,様々な化学組成(構成金属種,金属組成など)のLDHを合成し,陰イオン選択性と化学組成との相関を明らかにするとともに,その起源を結晶構造,層間の陰イオンや水分子の構造や状態,反応速度論的な解析を詳細に行うことから明らかにしようとしています.

 

層状複水酸化物の機能化

廃棄物削減

 

様々な2価金属と3価金属の組み合わせのLDHを比較的容易に合成できることが知られているので,機能を持っている金属を用いてLDHを合成することでLDHの本来の機能である陰イオン交換特性に,光・電磁気的機能を付与できる可能性があります.私たちの研究室では,機能性元素として希土類元素を取り上げ,LDHの3価金属サイトに導入したLDHの合成を試みています.例えば,Tbを構造に導入すると,緑色に光るLDHが合成できます.さらにこのLDHの発光が,層間にある陰イオンの種類に応じて変化することも明らかにしています.

 

特定分子・イオンを「視える化」できる層状無機/色素複合材料の創製と応用探索

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近年,化学物質アレルギーが大きな健康問題の一つとして取り上げられています.このような健康被害を回避するためには,肉眼では見えない空気中や水中の有害分子や有害イオンを効率よく,高速,高感度で見つける必要があります.そのためには,(1)空気中や水中にわずかに存在する分子やイオンを効率よく濃縮し,(2)濃縮した分子やイオンにより特性が変化するような材料が必要となります.私たちの研究室では,イオン交換性を有する層状無機化合物(粘土,LDHや金属酸化物ナノシート)をホスト材料として,その層間に環境に応じて色調や発光特性が変化する色素分子などを複合化することにより,層間に検知対象を取り込み,色素の応答により「視える化」を実現できる材料の創製と評価に関する研究を行っています.

 

帯電性無機ナノシート上でのフタロシアニン類の光化学特性の解明と応用探索

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ポルフィリン類やフタロシアニン類のように大きなπ共役系をもつ色素分子は,分子会合しやすいため分子本来の光化学的特性を利用することが非常に困難であることが知られています.近年,規則的に配置された電荷を有する無機ナノシート上に,ポルフィリンやフタロシアニン分子が会合することなく,高密度集積できることが報告されました.この報告をさらに深化させると,無機ナノシートの種類や電荷配置などによりポルフィリン類やフタロシアニン類の分子間相互作用や集積構造を自在に制御できることにつながり,さらにその先にはこれらの色素分子が示す光化学的イベントを制御できることになります.そこで私たちの研究室では,粘土ナノシート上へのフタロシアニン類の集積状態の形成機構の解明と制御を目指した研究を進めています.それに加えて,粘土ナノシート上に集積されたフタロシアニン類が示す光化学イベントと集積状態との相関を明らかにすることで,将来的には粘土ナノシート上特有の光化学機能の発現を目指しています.現在までにフタロシアニン類が示す光誘起一重項酸素発生反応が,粘土ナノシート上に単量体として固定化することにより効率よく進行することを明らかにしています.

 

廃材から低消費エネルギーで高効率・高選択的に回収できる新規資源回収技術の研究開発

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私たちの国は,”ものづくり”に必要不可欠な地下資源のほとんどすべてを国外からの輸入に頼っています.このような状況は,政治や国際情勢によって私たちの国の”ものづくり”が大きな打撃を受けることを示すものです.それだけではなく,SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)を達成した社会を実現するためには,限りある資源を世界中で有効に利用することが求められています.そのためには廃棄された様々な製品に含まれる金属,特に希少資源を工業的に利用可能な形で回収できる技術が必要不可欠となります.現在の資源回収は,一部の貴金属を除いてほとんどは冶金的技術により行われていますが,希少金属すべてが回収できている訳ではありません.私たちの研究室では,投入エネルギーを抑えた低環境負荷型で新しい資源回収技術として,(1)低温での処理を可能とする水熱処理法,(2)力学的エネルギーと化学反応を組み合わせた湿式メカノケミカル処理を提案し,研究開発を進めています.これまでにネオジム磁石からの希土類回収やペルチェからのTe金属として回収できることを報告しています.