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第11回 分散分析その4 多元配置
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 このようにラテン方格法にすると8つの組み合わせがあった実験を4つの処理の組み合わせに減らすことができます.しかし,この場合,交互作用は検出できません.
リン酸 窒素 P0 P1
N0 K0,K1 K0,K1
N1 K0,K1 K0,K1
 ラテン方格法に従い,以下のように組むとどの処理も2回ずつ現れます
(K0=A,K1=Bとみなします).
リン酸 窒素 P0 P1
N0 K0 K1
N1 K1 K0
 ラテン方格法による一部実施の具体例として3処理2水準の実験を考えましょう.
 水稲の施肥実験の例です.
 窒素(無施肥N0・施肥N1),リン酸(無施肥P0・施肥P1),カリ(無施肥K0・施肥K1)の3処理を組み合わせた8つの実験を圃場の関係から4つの実験に減らしたいとします.

 まともにすべての組み合わせについて実験すると
2.ラテン方格法による一部実施
 さて,多くの因子を取り上げると何がわかるのでしょうか.それは3つ以上の因子の絡む交互作用です.たとえばA,B,C,D,Eの5つの因子について実験するとすれば,A,B,C,D,Eの5つの因子の主効果,A×B,A×C,A×D,A×E,B×C,B×D,B×E,C×D,C×E,D×Eという2つの因子間の交互作用,A×B×C,A×B×D,A×B×E,A×C×D,A×C×E,A×D×E,B×C×D,B×C×E,B×D×E,C×D×Eという3つの因子間の交互作用,A×B×C×D,A×B×C×E,A×B×D×E,A×C×D×E,B×C×D×Eという4つの因子間の交互作用,A×B×C×D×Eという5つの因子間の交互作用がわかります.しかし,3つ以上の因子の関係する交互作用はその解釈が難しい上に,ほとんどの場合あまり大きくないので,たいていの場合,無視してもかまわないことがわかっています.
 各因子の水準が2つの場合,主効果と交互作用のそれぞれに1つずつ自由度が割り当てられるので,主効果と2つの因子間の交互作用の自由度の合計は15,実験全体の自由度は31なので,5つの因子を2水準すべて実験すると,合計32の実験が最低でも必要ですが,主効果と2つの因子間の交互作用に限定したら,半分の16の実験をすればよいことになります.
 このように実験の数を減らし,しかもできるだけ精度を下げず,また,知るべき交互作用(2因子間の交互作用は必要な限り知っておきべきである)も検出できるように実験を組むことができ,その方法として,ラテン方格法やその延長である直交表による方法があります.
 例えば,水稲の収量に影響を及ぼす因子は数多くあります.品種,気温,水温,窒素,日射量,作期,日長などなど.このすべてをもし取り上げて,各因子の水準を3つずつ設けたとしたら,どうなるでしょうか.因子が2つなら3×3で9回の実験を反復を設けなくてもしなければなりません.因子が3つなら,3で27となります.因子が4つなら3で81ともなり,水稲の実験としてはほとんど不可能でしょう.
 工場でものを作るときには制御可能な因子はかなりの数になります.それぞれの因子で最適な水準を見いだすことは生産コストを減らし,良質な製品を作る上で重要です.したがって,なるべく多くの因子を取り上げながら,実験回数を少なくすることが必要です.
1.多元配置の分散分析
 二元配置による分散分析の時に学んだように,一つ一つの因子を別々に実験すると複数の因子が絡んだ交互作用が検出できないので,同時にいくつかの因子を取り上げて実験する方がよいことは確かです.しかし,あまりに多くの因子を同時に取り上げると実験数が増えすぎて,現実的ではありません.
3.宿題
A.次回からは相関分析と回帰分析について学ぶ.
 相関分析とは2つの変量間の関係の強さを相関係数という値を求めて調べる方法である.回帰分析とは2つの変量の関係がどのくらいあるかを定量的に見積もり,さらに2つの変量の間の関係をある式に表現する方法である.下には散布図(2つの変量のうち,一方をx軸に,もう一方をy軸にして,両者の関係を図示した図)のパターンがいくつかある.aはxが増えれば,yも増加する傾向がある関係を示す.aの例としては,世界各地点での一年の最高気温と最低気温にはこのような関係があるだろう.eはxが増えれば,yは減る傾向のある関係を示す.eの例としては,一年間の晴天の日数と降水量の関係が挙げられる.cはxとyの間に関係がないことを示す.cの例としては,北極でのオーロラの数と東京駅で売れる弁当の数があるかもしれない(たぶん関係はないとは思うが・・・・・・).
@ 以上のa,c,eの3つのパターンに当てはまる2つの変量を考えよ.
A aもしくはeにパターンについて,20組以上のデータを集め,散布図を書け.
B Aで書いた散布図を見て,2つの変量の関係がどの程度強いのかを考えよ.すなわち右の図でもbよりはaの方が両変数の関係が強い.自分の集めたデータを右のパターンと比較し,どれに近いかを考えよ.

散布図からわかること(1月と7月の平均気温の例)
エクセルでの散布図の書き方
各自が異なるデータを相関分析と回帰分析のそれぞれについて調査すること.そのために事前にどういうデータを調査するかを204室前のホワイトボードに貼った紙に報告すること(早い者勝ちとする).今回の宿題の提出は1月16日(金)午後5時とする.

 なお距離と運賃のように片方を指定するともう一方がばらつきがなく,決まってしまうデータはこのような解析にはふさわしくない.都道府県のデータを使うのも,北海道や東京都のように面積や人口の極端に大きいデータが入るのでよくない.