島根大学 生物資源科学部 農林生産学科

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コースの伝統

 農業経済学コースの歴史は、戦後間もない頃に発足した島根農科大学農林経済学科に遡ります。その後、島根大学農学部農林経済学科となり、生物資源科学部地域経営学講座に引き継がれ、農林・資源経済学講座などを経て「農業経済学コース」となります。当コースは70年近くにわたって、日本の農山村と農林業を見続けてきました。そして、これから日本の経験を海外の途上国の農村開発に活かし、また地域の資源問題と環境問題にも取り組もうとしています。
 農林経済学科発足当時の農林業や農山村は、戦後の疲弊した状況から、新しい農山村へと希望をもって立ち上がろうとしている時でした。私たちの大先輩の先生方は、それらの農村調査を重ね新しい農林業と農山村のあり方を地元の人々と一緒になって考え、適切な指導をしてきました。また調査結果の分析を深め、学問的に高め、その後の日本の農山村開発研究の模範となってきました。
 昭和30年代中頃から高度経済成長が始まり、それに伴って農山村では農林業生産の近代化合理化とともに、都市への人口流出により過疎化が進行しました。その過疎問題に関して、農林業・社会・生活・医療福祉などの多方面からの本格的な調査研究が行なわれましたが、それも大先輩の先生方の成果です。この研究は高く評価され、それがきっかけになって日本各地の大学が過疎問題研究に取り組み始めたといえます。
 戦後の農山村は時代の波に翻弄されながら、しかし、したたかに生き続けてきました。その時代時代の変化に応じて農山村・農林業の正確な舵取りが必要になります。現代の農山村では少なからぬ地域で、人口減少が著しくしかも死亡数が出生数よりも多い自然減という状態になっています。このまま座視すれば、数百年以上も続いてきた農山村集落が消滅してしまう恐れがあります。


出版物(教員の共同研究、全6冊)

 それぞれの時代画期において、私たちは、中国地方の農山漁村を題材に調査研究を行い、スタッフ全員で検討を重ねその成果を世に問うてきました。それらの一部は、『農山村開発論』(1974年)、『農林業生産力論』(1979年)、『過疎山村の再生』(1989年)、『中山間地域経営論』(1995年)、『中山間地域農村発展論』(2012年)、『地域資源活用による農村振興』(2014年)にまとめられています。これらの長年にわたる一地方大学からの研究成果の発信は、全国的に注目されてきました。
 卒業生も60余年の歴史の中で、農林水産省、国立研究開発法人、各県、各市町村、JA全国組織・県組織、農林漁業関連団体、民間企業、教育機関(高校・大学)などで活躍しています。各界の先輩方とその業績も、私たちの大きな財産です。
 私たちはこれからも、わが国と世界の食と農林漁業、環境と資源管理、地域のあり方を模索していきます。
 受験生のみなさん、私たちとともにこれらの問題について勉強し、考えていきましょう!

『地域資源活用による農村振興―条件不利地域を中心に―』 谷口 憲治編著 農林統計出版 2014年発行_図書の情報はこちら

第Ⅰ部 資源論と条件不利地域論
 第1章 資源論の再考と地域資源活用による農村振興
 第2章 青壮年・高齢者能力格差と最適生産・流通構造
 第3章 条件件不利・場所愛・運命的定住-2,3の断片的考察-
 第4章 生活条件と居住地・就業地の選択問題に関するモデル分析
 第5章 モンスーン・アジアにおける土地所有権問題の展望
 第6章 原子力発電所事故が生鮮魚介・肉類需要に与えた影響
第Ⅱ部 地域資源管理組織による農業振興
 第7章 地域資源を活用した集落営農組織の展開方向-ビジネスモデル的視点から-
 第8章 地域農業組織による社会貢献型事業への取り組みの背景と今後の展望
 第9章 中山間地域の小規模集落営農組織における法人化の意義―島根県を事例として―
 第10章 集落営農法人の人材確保と育成―法人リーダーに学ぶマネジメント―
 第11章 集落営農法人における従業員への経営継承の実態-島根県の法人を事例として-
 第12章 農業金融における貸出手法と企業的経営の会計情報の整備・支援
 第13章 中国東北・稲作地域における農地利用権の移動による農民専業合作社の展開と農家経営-吉林省梅河口市のS農業専業生産合作社を事例として-
 第14章 中国における環境問題と貧困問題を両立する営農方式-寧夏回族自治区塩池県宏翔灘羊飼養園区を事例に-
 第15章 インドネシアにおける家計消費と鳥インフルエンザに関する考察
第Ⅲ部 農林水産資源活用による農村振興 
 第16章 飼料自給率向上を目指した国産濃厚飼料生産利用の成立条件
 第17章 中山間地域の森林資源活用と林業振興―資材・エネルギー産業としての新たな森林利用体系―
 第18章 山村の暮らしに埋め込まれた林業再生へむけて-実践研究からみえてきた山村住民,移住者,近郊都市住民の協働可能性とローカルな木材流通拠点の創出-
 第19章 水産資源の利用と漁業生産組合の歴史的展開―島根県を事例に―
 第20章 成人の朝食欠食を規定する要因
 第21章 小学生の欠食・偏食の背景要因に関する考察
第Ⅳ部 農村非物質資源活用による農村振興
 第22章 中山間地域における双方向型の地域交流システムの可能生-鳥取県日野郡日南町を事例として-
 第23章 中山間地域における農家の農外事業展開の特性
 第24章 地域観光資源としての工場見学の類型と集客力のメカニズム
 第25章 山間地域における老農技術の伝承と有機農業

『中山間地域農村発展論』 谷口 憲治編著 農林統計出版 2012年発行_図書の情報はこちら

序 章 課題と方法
第1章 地域個性としての地域資源を活かした中山間地域農村発展論
第2章 愛と資本-地域の再生を求めて-
第3章 中山間地域におけるガバナンスと地域資源管理へのソーシャル・キャピタルの影響
第4章 中山間集落におけるソーシャル・キャピタルの特性に関する構造分析
第5章 農村地域経済の多様性と持続性-雇用成長からのアプローチ-
第6章 中山間地域における堆肥・稲藁利用を軸とした耕畜連携システム-堆肥センター利用組合を事例に-
第7章 山間地域における生活改善グループの結成とその後-山口県錦町向峠集落を事例に-
第8章 地域金融機関による農業ビジネスマッチング事業の意義と課題
第9章 近代日本における漁業組合の展開-山口県の「優良漁業組合」を中心に-
第10章 途上国における世帯レベルの食料貧困-フィリピン・ミンダナオ島を事例として-
第11章 バングラデシュにおける貧困地区住民の所得水準とソーシャル・キャピタル
第12章 アジア途上国における雨季の食料摂取状況-東ティモールとバングラデシュの都市部を事例として-
第13章 中国西北部内陸地域における農村小額金融組織の扶貧機能と管理システム-寧夏回族自治区塩池県の農村小額金融を事例に-
終 章 結論

『中山間地域経営論』 北川泉編著 御茶の水書房 1995年発行

 序 章 中山間地域の課題と問題の所在
 第1章 中山間地域農業の構造再編と担い手育成
 第2章 中山間地域における肉用牛振興と地域営農・資源利用システムの再編
 第3章 林家の経営と組織体の変化
 第4章 内水面漁業資源の活用と中山間地域振興
 第5章 中山間地域における兼業農家の存立条件
 第6章 中山間地域における農産物流通の新展開
 第7章 国土保全と地域林業振興への新戦略―流域管理システムの検討―
 第8章 中山間地域経済の構造―産業振興の後方連関分析―
 第9章 農畜産加工業を統合軸とした地域産業複合化
 第10章 むらおこしと農村リーダー
 第11章 都市と農山村の交流
 第12章 地域づくりと行政の役割―「内発的発展論」の検証―

『過疎山村の再生』 永田恵十郎・岩谷三四郎編著 御茶の水書房 1989年発行

 第1章 序論―過疎山村の変貌と農林業の再生―
 第2章 旧鉄山地帯における大山林地主の変質と農業生産力構造
 第3章 地域個性と流域の地域経済
 第4章 自然立地条件からみた三流域農(林)業の特質
 第5章 林業の地域個性形成のメカニズム
 第6章 地域資源管理・利用体系再生への模索
 第7章 中山間地域における土地利用型農業の再編と担い手
 第8章 畜産的土地利用の再編をめぐる諸問題
 第9章 林野所有と林野利用の地域構造
 第10章 農業生産力の地域格差と農家兼業構造
 第11章 市場条件の変化と地域農林業再生の課題
 第12章 総括

『農林業生産力論』 安達生恒編著 御茶の水書房 1979年発行

 第1章 課題と方法
 第2章 農林業生産力構造論
 第3章 農業の展開と担い手の構造的変化―出雲平野を中心として―
 第4章 商業的農業の展開と担い手の構造的変化―大山山麓畑作地帯を中心にして―
 第5章 農村工業導入と地域農林業の構造的変化―石見奥山間を中心として―
 第6章 地域農林業の生産力構造と担い手の変化―奥出雲を中心として―
 第7章 総括

『農山村開発論』喜多野清一・安達生恒・山本陽三編著 御茶の水書房 1974年

 第1部 序論
 第2部 四国における農山村開発―生活構造分析を中心にして―
 第3部 東北における農山村開発―意識構造分析を中心にして―
 第4部 九州における農山村開発―村落構造分析を中心にして―
 第5部 中国山地(備北)における農山村開発―生産組織分析を中心にして―
 第6部 中国山地(奥出雲)における農山村開発―自治組織分析を中心にして―

〒690-8504 松江市西川津町1060
島根大学 生物資源科学部 農林生産学科
農業経済学コース (現3~4年生:農村経済学教育コース)

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