ゲル内消化プロトコール&MALDI TOFMS/MS
一日目
1. ライトボックスの上にサランラップを引いてCBB染色したゲルをその上に置く。
2. ディスポメス(アズワン No3 2-5726-29)でバンドギリギリを切り出す。
3. メスを使って切り出したゲルを取り出し、サランラップの上に置く。
4. ゲルを細かく刻む(イエローチップで吸えない大きさ)。
5. ゲルを1.5mlのマイクロチューブ(DNA low binding tube 022431021 eppendrf)に入れる。
6. メスはキムワイプで良く拭けば次のバンドにも使える。
7. 1M重炭酸アンモニウム(wako 012-21745 500g 室温保存)を調整する(以後、洗浄液とする)。試薬はMS専用にして他の実験には使わない。
重炭酸アンモニウム0.79gを15mlのチューブに入れて、だいたい10mlまで超純粋(以下MQとする)を加え(8F 共通の装置で新しい水を汲む。汲みたてを使うこと)、完全に溶けるまで良く混ぜる。薬さじは清潔な物(特にMS用にする必要はない)。
8. 脱色液を作る
1M重炭酸アンモニウム 300ul
アセトニトリル 3.6ml (シグマアルドリッチ34967-2.5L LC-MS用 劇毒物)
MQ 8.1ml (TOB 1ppb 汲みたてのもの)
*通常脱色液は50%ACNだが、30%CANの方が脱色が早いのでこちらを用いる。
9. 脱色液を100ul 5.のチューブに加える。
10. チューブミキサーでゲルが良く動くように10min攪拌する(長い分にはOK)。
11. 上清を捨てる。サンプルが複数あるときはチップを変えなくても良いが、ゲルのキャリーオーバーが無いかはいつもチェックする。
12. 9.10.11.を2回繰り返す(色が抜けるまで)。
*この間にヒートブロックを56℃に設定する。
13. 上清を完全に除く。
14. 150ulのアセトニトリルを加えて1-2分間攪拌する(ゲルが脱水されて白くなる)。
15. 上清を完全に除く。
16. 5分くらい遠心エバポレーションする(901号室実習室)。
17. 還元アルキル化を行う。
1M DTT(ナカライ14112-52 4℃保存)を調整する。
7.7mgのDTTに50ulのMQを加える。
18. 16.に100ulの還元液(17.)を加えて、56℃で45分間反応させる。
19. 遠心してゲルを沈殿させてから、ピペットで還元液を取り除く。
20. 25mM重炭酸アンモニウム溶液(洗浄液)を調整する。
1M 重炭酸アンモニウム 100ul
MQ 3.9ml
21. 100ulの洗浄液(20.)を19.に加えて、5分間振盪する。
22. ピペットで余分なDTTを取り除く
23. アルキル化液を調整する(寸前に調整)。
ヨードアセトアミド 10mg (wako 099-05591 遮光4℃保存)
1mlのMQを加えよく混ぜる。
24. 100ulのアルキル化液をチューブに加えて遮光して室温にて30分間振盪する。
25. 遠心してピペットでアルキル化液を取り除く。
26. 100ulの洗浄液(20.で調整済み)を加えて室温で5分間振盪する(時間が長い分にはOK)。
27. ピペットで上清を除く。
28. 26.27.を合計7回行う。*ZipTipで脱塩を行う場合は数回でOK
29. 上清を除き、アセトニトリルを100ul加える。3分間攪拌する。
30. 上清を完全に除き、エバポレーターで5分間乾燥させる。
31. トリプシン溶液を調整する(氷上にて)。
200ng/ul トリプシン溶液 5ul
25mM 重炭酸アンモニウム 20ul
(トリプシンpromega V5280 trypsin gold mass spectrometry grade を50mMの酢酸溶液で200ng/ulに希釈し-80℃で保存)
32. サンプルを氷上に置き、トリプシン溶液を少しずつ加える(3-5ulくらい。場合による)。
33. 氷上で10分ぐらいおき、完全に浸み込むのを確認する。チューブをタップし、余分な液がある場合は取り除き、不足している場合は、トリプシン溶液(31.で調整済)を少し追加する。
34. 37℃(ヒートブロックはNG、インキュベーターにて)でO/N反応させる。ジップロックにサンプルと、水道水で湿らせたキムワイプを入れ、乾燥を防いだ状態で反応させる。
二日目
35. 抽出液を調整する
100%アセトニトリル 500ul
トリフルオロ酢酸(以下TFA)50ul(Wako 204-02743 揮発性 4℃保存)
MQ 450ul
35. 50ulの抽出液を加えて30分間攪拌する(長くても良い)。
36. 上清を新しいTubeに回収する。
37. 遠心エバポレーターでエバポレーションする。ペプチドの濃縮が目的(濃いサンプルでは不要の場合もある)。
以下は単なる目安。時々確認すること。
20分で20ul位になる。
25分で12-15ul位になる。
40分くらいでOK。
40℃で行うとかなり短時間になるので注意。
38. マトリックス溶液を調整する(適時調整 保存はしない)。
α-CHCA 2.5mg(大体でOK多くても析出するだけ) (Wako 037-19261 4℃遮光保存)
アセトニトリル 125ul
0.2%TFA 125ul(998ulのMQに2ulの100%TFAを入れて調整)
Vortexで3min攪拌(沈殿が出てもOK)
遠心15000rpm 室温 5分間
上清を新しいチューブに移す(上清を100ulも取れば十分量)。
39. 37.のサンプルの溶液の量を測り、その1/10量の1%TFAを加える(プロトン付加を促進)。
40. Mixerでよく混ぜる(1-2分間激しく)。
41. 0.5ulのサンプルをMALDIのプレートにアプライする。
42. 続けて0.5ulのマトリックス溶液(38.)を加える。ピペッティング操作で溶液を押し出そうとするのではなく、チップに指からの熱を伝えて熱膨張で押し出すようにすると良い。
Shot
1. MassLynxからMS TUNE画面を立ち上げる。 MALDI+のタブ→UNLOADボタンを押し、プレートを取り出し、42.のプレートをセットしLOADボタンを押す。*プレートが落下しやすいので所定の位置に固定。
2. 再生ボタンを押す。
3. サンプルの名前を入力する。
4. マスレンジを選択する。
5. レーザー照射時間を3分間に設定し、データ積算時間を5秒にする(サンプルによって変える)。
6. レーザーの当て方は自動モードとCrossHairがあるが、どちらでも良いが最初はCrossHairを推奨する。
7. レーザー照射ボタンと早送りボタン(≫)を押す。レーザー強度は280、Steprateは28に設定する(サンプルによって変える)。
8. Masslyx画面に移り、Chromatogramをクリックする。
9. Chromatogram画面を右クリックし、新しい画面を立ち上げる。時計ボタンを押してリアルタイムにする。
10. 測定する。
11. 測定が終わったら、トータルイオンクロマト上を右クリックしながらドラックし、積算データを表示する。
12. Process→Automatic Peak Detectionをクリックする。
13. Display→View→Data Thresholdの%Full Scaleにチェックをいれて、バックグラウンドが消える数値を入力する(小さい数字から入れてみる)→OK。
14. Edit→Copy Spectrum Listをクリックする。
15. USBチップのウィルススキャンをウィルスソフトが入ったPCで行う。
16. Note Padに貼りつけて、名前を保存して、USBチップに保存する。
17. Webサイト Mascot→Peptide Mass Fingerprintingをクリックする
18. Database(s)はSwissProtを、Enzymeはトリプシンを選ぶ
19. Fixed modificationsにはCabamidomethyl(C)を選択。
20. Queryに15.を貼り付ける。最大1000個のm/zを貼りつけられる。
21. ProteinMassが分かる場合は入力、Peptide tol.±の数値は小さいほど条件が厳しくなる。
22. Start Searchを押し、しばらく待つと結果が表示される。