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島根大学
生物資源科学部
昆虫生態学分野

Shimane University
Faculty of Life and Environmental Science
Laboratry of Insect Ecology



研究紹介 泉 洋平

 
主に昆虫(農業害虫)の季節適応、特に低温耐性について研究しております。直接防除につながる訳ではありませんが、春先の発生時期の推定や、温暖化による南方性害虫の定着に関する知見を得られるなど、防除をする上での有益な情報をもたらします。

 当研究室で行っている研究は大きく2つに分かれます。一つは、様々な害虫種の低温耐性について、凍結する温度や半数が死亡するのに必要な温度や時間などを調査するとともに、それらの種が越冬している場所を調査するなど、生態学的な側面から研究を行っています。もう一つは、低温により昆虫が死んでしまうときに、昆虫の体の中ではどのようなことが起こっているのか、また寒さに強い昆虫種はどのようなメカニズムで寒さに耐えているのかを生理・生化学的な側面から研究しています。


@害虫の低温耐性に関する研究

昆虫がどれだけの低温に耐えることができるのか、またどのようにして厳しい冬を乗り越えていくのかについて研究しています。
一例として・・・
果樹の害虫であるチャバネアオカメムシとクサギカメムシでは、クサギカメムシが寒冷な地域において優占種であるとされていますが、両者の過冷却点(虫が凍結する温度)を測定すると、チャバネアオカメムシが約-15℃、クサギカメムシが約-12℃とチャバネアオカメムシの方が低いと言う結果になりました。しかし、長期の暴露においてクサギカメムシは-5℃で2ヶ月以上耐えられますが、チャバネアオカメムシは1週間以内にすべての個体が死亡してしまいます。これらの結果からは、寒さの厳しい地域ではチャバネアオカメムシは越冬できないように思われますが、チャバネアオカメムシの越冬場所は森や林の落ち葉の裏側であり、雪に覆われてしまえばそこは0℃でほぼ一定となります。0℃ではチャバネアオカメムシは2ヶ月ほど耐えられるために、東北地方においても越冬が可能となり、実際に越冬が確認されています。

クサギカメムシ           チャバネアオカメムシ









現在研究している昆虫
クワコナカイガラムシ、フジコナカイガラムシ、イチジクヒトリモドキなど



A低温障害回避機構に関する研究