研究紹介

山下多聞(森林科学部門)

1. 森林立地学

1.1 概要

 森林立地学会によれば、森林立地学とは「森林土壌を中心とした森林の環境と植生およびそれらの相互作用を対象とした学問分野」となっています。荒廃した森林の生産力増強や,酸性雨や温暖化の森林生態系への影響評価など,将来にわたる森林の健全性の維持や持続的な多面的機能の発揮に関わる森林の取り扱いにおいて重要な役割を期待される研究分野です。

1.2 研究紹介

 これまで、静岡県の水窪国有林、滋賀県の比叡山社寺有林、島根大学三瓶演習林、ドイツのトウモロコシ畑やトウヒ林、茨城の国有林などなどいろいろな山で畑で土を掘ってきました。土を掘る目的はその都度異なりますが、おおよそ以下のようなことになります。

○ 森林生態系における窒素の循環

 − 森林土壌において窒素は植物にどれくらい吸収されているのか
 − 広葉樹林とスギ林では土壌窒素の形態変化は異なるのか
 − 森林の地形は土壌窒素の形態変化に影響するのか
 − 土壌窒素は渓流にどれくらい流出するのか

○ 森林生態系に対する酸性雨の影響

 − 山陰の森林における降水の水質はどのように変化してきたか
 − 森林生態系内の降水である林内雨や樹幹流の水質は樹種によって異なるのか
 − 酸性雨によって植物や土壌はどのような変化が見られるのか
 − 酸性雨にともなう重金属の移動はどれくらいあるのか

○ 森林生態系における温室効果ガス動態

 − 森林土壌は二酸化炭素やメタンを吸っているのか吐いているのか
 − 二酸化炭素やメタンの動態を決定するのはどのような要因か

○ 落葉広葉樹二次林の土壌

 − 土壌養分の水平分布と樹木の分布は関係があるのか
 − 土壌型によって形成される団粒のサイズは異なるのか
 − 土壌中に団粒が形成されると炭素は滞留時間が長くなるのか


写真-1 酸性雨(樹幹流)を測定するための転倒マス


写真-2 
温室効果ガスを測定するためスギ林に設置されたステンレスチャンバー

2. 熱帯林生態学

2.1 概要

 P.W. Richardsが名著The Tropical Rain Forestを著してから60年。熱帯林生態学はその名の通り熱帯地域に分布する熱帯林を対象とした森林生態学といえます。熱帯林の特徴として、きわめて多様な生物相ときわめて大きなバイオマスが挙げられます。21世紀にはいっても熱帯林の減少傾向は一向に収まる気配はありません。熱帯林が失われることによる地球環境の変動や生物多様性の低下などは、人類の生存にどのような影響があるのか明らかにすることそして正確に予測することは、我々に課された重要な課題です。

2.2 研究紹介

 1992年以来、日本の国立環境研究所、マレーシアの森林研究所とマレーシアプトゥラ大学の国際共同研究プロジェクトに参加し、マレーシア半島部のパソ森林保護区で断続的に調査研究を行っています。

土壌の生態

 − 熱帯林環境下における土壌水分の移動にともなってどれくらい養分は移動するのか
 − 林床有機物分解にシロアリは重要な役割を果たしているのか
 − 降水にともなう炭素循環はどれくらいあるのか

樹木の生態

 − 気候変化の乏しい熱帯でもフタバガキ科樹木の人工林における落葉生産の季節性はみられるのか
 − 低地フタバガキ林の根系バイオマスはどれくらいあるのか
 − 低地フタバガキ林の伐採後の地下部バイオマスは何年かかって回復するのか
 − 熱帯樹木実生水耕栽培による根からの滲出物産生を推定できるか


写真-3 樹高10m近い木性シダ


写真-4 重機で根株を掘り返しています。この根株だけで数トンもの重量がありました。

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