森林工学実習・ドイツフォレスター研修報告 

石田 薫(森林学教育コース3年)

・日程(2015/9/13〜2015/9/20)

9/13(1日目) ホーエンツォレルン城見学から懇親会、宿泊地
9/14(2日目) 大学敷地設備説明・授業・演習林見学
9/15(3日目) 大学での授業・マウルブロン修道院見学から登山
9/16(4日目) 大学での授業・チップボイラー見学
9/17(5日目) シュヴァルツヴァルト林内で機械見学
9/18(6日目) 製材所見学・テュービンゲン市街観光
9/19(7日目) 登山(FSC認証・持続可能林業)ブドウ・ワイン農園見学、懇親会
9/20(8日目) 森林教育センター

 今回2015年の研修内容は森林経済・森林利用・林政であった。昨年と比較した感想を聞くと、今年の研修では観光の面でも充実していたそうである。

 13日の朝、各大学参加者でドイツ・フランクフルト中央駅に集合し、研修を始めた。1日目は参加者同士の交流のため、観光と懇親会。研修の宿泊地は修道院(オーナーは日本人でとても居心地の良いところであった。)


写真-1 宿泊した修道院


写真-2 修道院の礼拝堂内部

 2日目にローテンブルク大学を訪れた。これからの予定などの説明と、この大学で実施されている教育について聞き、実際に大学構内を回って学内の設備(熱利用機械やチップ・ペレットなど)や獣被害についての対策 (狩猟免許・猟で得た動物の処理など)について説明を聞き、演習林の案内を受けた。


写真-3 学内ボイラー室の多種類の木材チップ


写真-4 演習林内の風景


写真-5 学内にある獣類処理室


写真-6 授業風景

 3日目は朝にドイツ林業の所有権と経済状況についての講義を受けて、マウルブロンヘ向かった。宿泊地から少し離れており、山に登る前に昼食もかねて修道院の観光をした。新教徒の修道院で、噴水と壁画が見どころであった。その後、マウルブロンの山で獣害対策や萌芽更新について説明を受けた。ここは近隣住民が休日に趣味で登山や散歩をすることもあり、林内に特徴的な標識が見られた。


写真-7 シュヴァルツヴァルト林内の伐倒木


写真-8 シュヴァルツヴァルトからの風景

 4日目は、午前中は木質バイオマスの論理とその利用状況について講義を受けて、ペレット向上に見学に向かった。ここでは、林地残材や建築残材、土木系廃材を集めペレットにして利用していた。立地などの条件であまり熱利用が考えられていない日本と違い、電気利用だけでなく熱利用もしている(電気だけでは効率が悪いらしい)。機械の特徴として、ベルトコンベアを使って集積した材料から利用物と不純物を分けていたこと、水を循環させる冷却システムが搭載されていることが挙げられる。

  5日目はシュヴァルツヴァルトを訪れ、林業機械を使った施業を見学した。急斜面での作業で、ハーベスタやフォワーダ、などの大規模な機械を使用しており、日本平均の約8倍の規模らしい。写真の機械はキャタピラがついているが、現地で見た林業用の乗用車はごく普通のタイヤであった(日本で見るバンのようなものとは違っていた)。
 これはドイツ(他ヨーロッパ諸国でも)で農業も発達しているため、車両の土台があり、林道の整備も進んでいるからである。

 6日目は、シュヴァルツヴァルトの中腹部にある製材所を見学した。かまぼこ板と卒塔婆(お墓に置いてある、供養のために用いる細長い板)を作っていた。卒塔婆という局所的な外国のニーズにも合わせて用途別に木材をえりすぐっていた。用途ごとに最良のものを使用し、選ばれなかった木材はつなぎ合わせて違う用途へ利用される(最終集成材)。
 小さな工場であったが35人の人間を雇っているため労働生産性は低い。しかし高品質にこだわるため、用途別の木材を選べる人がいなければいけないことと、地域雇用への貢献もしている。そしてこの工場では、他の水を沸かすことにより水蒸気でタービンを回す仕様の発電所と違い、シリコンオイルを使用していることも特徴的であった。


写真-9 製材所の木材


写真-10 製材所の合板

  夕方前からテュービンゲンでのフードフェスティバルを観光。全員でテュービンゲン大学の学生たちが携わるボートで街を眺めた。基本自由行動。


写真-11 テュービンゲン市街の風景1


写真-12 テュービンゲン市街の風景2

 7日目は、ブドウ・ワイン農家を見学した。まず敷地の山を登り、地元の名士でもある農園の経営者から説明を聞いて、昼食を兼ねてワインのテイスティングを体験した。夜は研修最後ということで、先生・学生合同での懇親会が開かれた。

 8日目は、「木の家」という意味の名前の子供向け森林・林業教育の施設を訪れた。動物のはく製や地球規模の温暖化や森林伐採などの問題についてのオブジェなどドイツにおける、子供のころからの森林との触れ合いを体験した。


写真-13 多種類の木の幹の比較


写真-14 建物玄関にある一本の木から作ったオブジェ


写真-15 ウサギのはく製

 この研修を通して学んだことは、まずドイツと日本では林業でのコストの割合が違うこと。ドイツでの林業コストは60%が収穫・30%が育林・10%が植林である。この内訳となる要因は、ドイツの森林では下層植生があまり発達しないこと、木を伐ればすぐに稚樹が生えることから育林のコストがかからないためとされる。そして土壌が粘土質であるためナラが生育に適している(材の値段も高い)。大径のナラが多く存在することから、虫害自体は存在するが、ナラ枯れは見られないようである。獣害に関しては鹿の若い木への被害が多いようで、地表面から1mほどの長さのチューブで樹木の幹を保護していた。値段の高さからナラが好まれているものの、多様な樹種のメリットを生かした森を作るため、一斉林としての施業はあまり行われないらしい。どのような森を作っていくかといった計画は州が行い、フォレスターが林家たちの仕事を回すから小規模の林家でも生き残っていける。
 この経営面について、5日目の林業機械見学での施業についての説明からは、ドイツと日本の林業の比較が見えた。ドイツでは間伐の際、寝ている芽に陽があたると節が出来て合板や丸太として使えなくなるので、残したい木の周辺の木をあえて切らずに陰を作って、枝が生えないようにしている。このようにちまちまと間伐が出来るのは林道密度が高いためそうコストが高くならないからで、日本ではしようとしてもコストに見合わない。小面積伐採をしても林道整備をしていれば収益があるのは、伐れば生えてくるという林業向きの側面を持つため。加えてこのような整備は州のフォレスターが州・民・私の森林において、してくれるので補助金を作る必要がない。前述での伐採コスト60%とあるものの、30%の育林コストは州が受け持つ。
 ヨーロッパの土地は日本のものより地質学的に古いため、崩れにくいし降雨も日本の約半分であるので、最初期コストがかからないうえに、育林の手続きや労働も受け持ってもらえるため、伐出コストさえ下げることが出来れば利益を上げられる。これらから、補助金ひとつだけについても制度・立地・歴史も考慮しなければ、国間での林業を比べることはできない。輸出量に関しても、ドイツの木材輸出量は多いが、授業で出された統計資料ではEU間も含まれていた。日本国内でいえば北海道から山形間で輸出と言えないように、言葉と数字に惑わされる部分もあった(特に今回は日常であまり使用しない英語での記述であることも相まって)。物事の判断、特に比較の際には、内容に関する予備知識と判断力・注意力が大いに必要であると痛感した。  

 来年の研修に参加しようと考えていらっしゃる方、ぜひドイツへ向かうことをお勧めします。日本の林業に多大な影響を与えてきたドイツの林業に実際に現地を訪れて触れることはとても有意義ですし、他大学の先生方・学生の方々と研究のテーマや各大学の特色などについてお話しすることもこの研修の魅力の一つです。
 また、ドイツの現地集合・現地解散ということを利用して、個人で入国・出国のスケジュールを組み、勉強だけでなく自分(といれば同行者)だけでの観光をして、交通・宿泊機関、イベントなどの異文化を体験することも良い経験になると思います。
 パスポート・クレジットカード・航空券を持っていなければ、早めに準備しましょう。準備開始の時期が早ければ早いほど総費用は安く抑えられます。研修前後に旅行をするのであれば、ホテル・観光地・交通機関の予約も日本で済ませてから(なんでもプリントアウトして持参して)、渡航に臨みましょう。
 研修中の授業や見学での説明はすべて英語で行われます。できるだけ英語活用能力を万全にしておきましょう。最悪できなくても生きてはいけますが、できるに越したことはありません。わからないときは参加者の方々に質問して教えてもらいましょう。今回の研修で私たちは、時間のある夜には宿泊先の修道院でその日のまとめをしながら、他大学の学生さんと交流していました(飲み会も含め)。ドイツ語は分からなくてもさほど問題ありません。だいたいのドイツ人の方々は英語も堪能ですので、観光客だと判断して英語で対応してくれます。ですが、看板や標識などにあるドイツ語を見ることも楽しみの一つですので、余裕があれば日常で使われるドイツ語を頭に入れておくと良いかもしれません。


写真-16 研修宿舎修道院の自室ベランダからの風景

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