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第8回 分子生物学的手法と作物学―環境ストレスを例として(6月2日)
2.病原菌の毒素を入れたり,高い塩分濃度にした培地に放射線や変異誘発物質によって突然変異を起こした植物細胞群を培養し,生き残った細胞から再生個体を得る育種選抜方法を細胞選抜という.この方法でトマト青枯病抵抗性の個体を作出した例もある一方,ほとんどの場合,細胞選抜で得られた抵抗性のある細胞は,再生個体になると真の抵抗性を見せなかった.特に耐塩性,耐冷性の個体を選抜しようと,細胞選抜してもよい結果はほとんど得られなかった.
  このような育種方法に対する意見を述べよ.(批判的になる必要はない)
予習課題
1.ストレスは人間などの動物にも,作物などの植物にも共通して使われる言葉である.
1) 人間についてストレスという言葉を使う場合,例えば,最近,仕事のストレスが多いという場合,ストレスはどんな意味かを辞書などは一切使わないで,自分なりに考えてみよ.

注意) 自分なりに考えてみよという趣旨の設問なのでヒントは与えません.日頃,ストレスという言葉は頻繁に耳にしますが,もともと生物学の世界で生まれた専門的な言葉が日常の会話に普通に入り込んだものです.もともとの意味は次の設問で調べていただくとして,今までどんな意味だと思っていたかを正直に考えてみましょう.

2) 岩波生物学辞典(学科資料室にある)によってストレスの意味を調べよ.

注意)別にインターネットで調べてもいいのですが,クリックで手軽に知識を得るだけでなく,きちんとした書物から意味を読み取る能力も必要です.ここでは生物学辞典を検索してみましょう.

3) 植物へのストレスを大きく分けると,非生物的ストレスと生物的ストレスに分類できる.それぞれの例をあげよ.

注意)これもヒントはありません.なくてもできると思います.なお余裕があれば,なぜ植物へのストレスを非生物的ストレスと生物的ストレスに分けると都合がよいのかを考えてみましょう.

ヒント)新しい技術が出現するとまったく無批判に手放しで礼賛する人,よく考えないでかならずけちをつける人もいます.それは個々人の個性なのでいいわるいということでもないですが・・・
 生物の世界はいくつもの階層からなりたっています.その面から考えると,光合成の高い細胞を選んでも,群落レベルで差があるとは限らないでしょう.(この説明がわからない人は小葉田先生の稲学を受け直すように).さらに細胞選抜で使う未分化の細胞では葉に分化したときの細胞とは違うのかもしれません.例えば,土壌微生物による病気への抵抗性であれば,土壌にある実際の細胞(根などに分化した細胞)と細胞選抜に使う細胞は同じとはいえないのかもしれません.
 このように生物の世界はいくつもの階層からなっていることを考えて,論理的に考えてみれば,細胞選抜がどのような場合に有効なのかも明確になるのかもしれません.
 参考図書 これが生物学だ エルンスト・マイア シュプリンガー・フェアラーク東京