両側検定と片側検定

第7回 統計的検定へ戻る
 統計的検定ではたいていの場合,帰無仮説を立てたあと,今回の実験データの得られる確率を両側確率として計算します.すなわち下の図のように極端に大きい方にも,極端に小さい方にも外れる確率がどれだけ大きいかを計算します.

 しかし,次のように考える人もいるでしょう.今回のデータは1勝9敗なのだから,それぐらい外れる確率は0勝と1勝の2つの場合だけではないのか???これは片側確率といいます.

 統計的検定では特に理由がないかぎり,両側検定を使うことが勧められます.なぜでしょうか?検定はデータを取る前にどのようにするかを決めるのがよいということを思い出しましょう.データを取る前,実験前にはデータがどちら側に偏るかという情報はふつうは持っていません.したがって,上の例ではゲームする前にA君はキャラクターBよりも強いとも弱いとも情報はありません(それどころかA君はキャラクターBよりも強いと思い込んでいるのでした).したがって,片側の確率だけを利用する片側検定は望ましくないと考えられます.

エクセルを用いた母分散が既知のときあるいは大標本の平均に関する統計的検定(片側検定)
正規分布の基づくデータにおける片側検定の例
例:B牧場では牛の餌をF社からG社に変えた.G社の餌はより栄養価が高いので,F社のときの泌乳量5.0L,標準偏差0.8Lより向上すると予想した.実際に100頭を調査した結果,泌乳量は5.2Lとなった.泌乳量は増加したか?

帰無仮説: 泌乳量は5Lである.
対立仮説: 泌乳量は5Lより増加した.
このデータは両側検定すると有意水準1%では帰無仮説を棄却できません.このように片側検定では有意差がでやすくなります.これはあらかじめ泌乳量が増加するという情報があるかと考えられます.たいていの場合,片側検定を使うのは望ましくありません.少なくとも検定開始前にどういう検定をするかを決めておく必要があります.そうでないとP値をみながら結果をよいようにもっていくのでは,統計的手法を用いないで,カンだけで判断するのと大差ないことになります.
有意水準1%で帰無仮説は棄却できます.