トップページへ
第7回 t分布とt検定
実験計画学のトップページへ戻る

トップ アイコン
トップページヘもどる

宿題
 なお以上のような対応のない2つの小標本に関するt検定では2つの標本の母分散が等しいことが条件として求められます.ただし2つの標本の標本数が大きく異ならないとき(おおむね2倍以内)には,2つの標本の母分散が異なっていても,この検定でもおおむね問題がないことがわかっています.
 したがって,2つの標本の標本数が大きく異なり,しかも2つの標本の母分散が異なる場合にはこの方法を用いると問題があります.2つの標本の母分散が等しいかを検定するのはF検定でできます.
 もし2つの標本の分散が異なる場合はWelchの検定によって,2つの小標本の平均を検定します.Welchの検定については授業では説明しませんでしたが,エクセルではt検定同様に簡単に検定できます.
 
エクセルによるt検定(対応のない2つの小標本の平均に関する検定)
エクセルによるt検定(ある決まった値に対する検定)
 前回の講義では,標本が十分に大きいあるいは母分散が既知であることを条件に正規分布を用いて,検定しました.しかし,標本数が少ないときは母分散を標本の分散から推定する誤差があるために,その不確実さを加味したt分布によって,推定・検定しなければいけません.
3.t検定
エクセルによるWelchの検定(対応のない2つの小標本に関する検定)
エクセルによるt検定(対応のある2つの小標本に関する検定)

1.t分布

 標本が十分に大きいとき,あるいは母分散が既知のときは正規分布を使って,母平均を区間推定したり,母平均に関する検定を行うことができます(前回の講義).しかし,標本があまり大きくないときは,標本分散が母分散に等しいと仮定できなくなります.そのとき,正規分布する母集団から得た標本であれば,t分布を使って,標本から母平均を区間推定したり,母平均に関する検定を行います.
t分布とはどういう形をしているのか?

2.t分布による区間推定

 標本が小さいときでも点推定では標本平均をそのまま母平均の点推定値とします.しかし,この点推定がどれだけの誤差を含んでいるかはこれでは全く評価できません.したがって,信頼区間をつけて区間推定する方がよいことがわかります.
 信頼率p%のときの母平均μの信頼区間はエクセルの関数を利用して,以下の式を用いて計算できます.
例題:A公園の桜から6本の桜を無作為に選び,木についた花の数を数えた.結果,以下のデータを得た.
123,156,168,190,211,234.A公園の桜の花の数(の母平均)を95%および99%信頼区間をつけて区間推定せよ.
エクセルの関数を用いた計算方法での解答
もう一つの区間推定の方法は,エクセルの分析ツール→基本統計量を使う方法です.例題を計算すると以下の通りになります.
エクセルの分析ツール→基本統計量を用いた計算方法での解答
例:T食堂のラーメンの大盛りはライバル店Kレストランより50g多いと主張している.K君はT食堂で10回ラーメンの大盛りを注文し,こっそり重さを調べた結果,Kより47±4g多いという結果を得た.50g多いというT食堂の主張を検定せよ.
帰無仮説: H0:  μ=50g
対立仮説: H1:  μ≠50g

有意水準を設定します.この場合,有意水準を5%としましょう.

P値を計算します.
帰無仮説が成り立つとして,今回の結果が得られる確率はエクセルで次のように計算できます.
 したがって,有意水準5%で帰無仮説は棄却され,T食堂のラーメンの重さの母平均は50gでないと結論できます.
1.ある決まった値に対する検定
2.対応のない2つの小標本の平均に関する検定
例:T牧場とW牧場のニワトリの卵を10個ずつ調査し,それぞれ右下の表のようなデータを得たとなった.両牧場の卵の重さの母平均は違うのかを検定せよ.

帰無仮説 H0: μT=μW
対立仮説 H1: μT≠μW

ここでは有意水準を5%としてみましょう.
帰無仮説が成り立つとしたときに今回のデータが得られる確率であるP値はエクセルの分析ツールで計算できます.
 以上の結果を得ました.したがって,有意水準5%で帰無仮説は棄却され,2つの牧場の卵の重さの母平均は異なると結論できます.
 t分布は正規分布する母集団から得た標本の平均に関する分布です.したがって,t検定をするときには,母集団が正規分布する,あるいは正規分布に近似できることが前提条件になります.なお正規分布に近似できない母集団であっても,変数の対数,逆数などをとることによって,正規分布に近似できる場合,変数変換してから,t検定をすることができます.
3.対応のある2つの標本の母平均に関する検定
例:A,Bの2つのハカリで同じ品物を量る.同様に10個の品物についてそれぞれ量って,右の表のような結果を得た.2つのハカリの指示には差があるか.
 前項の対応のないデータでの検定を行うと5%で有意でないという結果が出ます.しかし,A,Bのハカリの差を品物ごとに取ると何か傾向がありそうだとわかります.このように2つの標本のデータがそれぞれ対応する場合,2つの標本は独立していないといいます.この場合,対応するデータの対の差dを検定しなければなりません.
対応のあるデータの差dについて検定します.

帰無仮説: H0:  μd=0 AとBの2つのはかりの指示は同じである. 
対立仮説: H1:  μd≠0 AとBの2つのはかりの指示は異なる.
 以上の結果から,有意水準5%で帰無仮説は棄却され.A,B2つのハカリの指示に差があると結論できました.

4.t検定するときの注意点

3.A君とB君はどちらが自転車で速く移動できるかを競いました.10台の自転車をそれぞれ1回ずつ使って,ある一定距離の移動時間を測定したところ,以下のようになりました.両者の自転車移動時間に5%の有意水準で差があるかを検定しましょう.
宿題をエクセルで解く方法
1.第6回の宿題4.で調査したデータを用いて,2種類の卵(あるいは別のもの)の重さの母平均が同じであるかを有意水準5%でt検定しましょう.また,それぞれの卵について,95%信頼区間および99%信頼区間をつけて母平均を推定しましょう.
2.第6回の宿題4.で調査したデータについて,今回返した前回の宿題の講評の最後に書いてある母平均についての検定をしましょう.
エクセルによるt検定(ある決まった値に対する検定)
エクセルによるt検定(対応のある2つの小標本に関する検定)

以下のような表記でもかまいません.

Welcjの検定に関する補足プリント(PDF:授業では配布していません)