はじめに 初年次教育である農業生産学科基礎セミナーについて

いろいろな講義スタイル
大学に入ってまずとまどうことは,授業にはいろいろなスタイルがあることでしょう.高校までの授業はスタイルがほぼ決まっていたと思います.ノートするだけの時間がない,何をノートしてよいのかわからないなどということはほとんどなかったでしょう.ところが,大学ではある先生は板書も資料もなく,話術だけで巧みにすすめます.ある先生は完璧なパワーポイントを投影してくれます.でもどちらも自分でノートしないと後にはおもしろい話と楽しい写真があったような・・・という記憶しかのこりません.
世の中に出ると何の資料もみせないで口だけで説明されることもあります.あるいは資料を投影されるだけで紙の書類など一切ない形での説明を受けることもあります.会社の用事でそんな説明会に出た結果,「資料くれないし,話は早口でメモはできなかったので,報告不可能です」などといったらどうなるでしょうか?
大学のうちにいろいろな講義に対応して,重要なことを記録し,かつ記憶に残す技術を身につける必要があります.それ以外にも大学を卒業するまでに,いやできるだけ早く1回生のうちに身につけておきたいことがあります.スケジュール管理,日誌の作成,グループでの活動ルール,専門書の読み方,基本的なレポートの書き方,発表の仕方などです.こういうことをこの農業生産学科基礎セミナーで学んでいきたいと思います.

大学4年間を有意義に過ごすためには—計画性をもって過ごそう
さらに大学4年間で何をするべきか,そして卒業後の進路をどうするかを今,考える必要があります.農業生産学科に入学して,どういう抱負をもっているのか?卒業後はどうしたいのかを学生みんなで考えていくことによって,将来像を具体的に作っていってほしいと思います.
そうはいっても今,自分の将来像を明確にできる人などいませんし,世の中で立派な業績を上げた人が若いときに明確なビジョンをもっていたわけでもないでしょう.まったく地図もないままに,高い山を登ろうとしたら,少し登るとまた眺望が変わり,新しい道が目の前に広がり,登る道を変えていくことになるでしょう.高くへ登るほどより遠くを見渡せるようになり,山頂へたどり着くために登るべき道はおのずから示されるようになります.
千里の道も一歩から,すなわち最初は1日の計画を立てられるようにしましょう.なお1日の計画を立てるといっても1日を予定でぎっしり埋めて,それを実行せよというつもりはありません.暇な時間も人生において必要です.でも計画をしっかり立てておくと余暇の時間も十分とれるはずなのではないでしょうか?

習慣の力—大学4年間でよい習慣を身につけよう
 習慣の力はおそろしいものがあります.人によっては一日の行動のかなりの部分がほとんど意識しないまま,習慣によって行われるかもしれません.生活習慣病ということばもあります.よい習慣を大学のうちに身につけるようにしましょう.何がよい習慣であるかはみなさんが自分で考えたらよいことです.ここでは授業でノートをつける,予習や復習をする,準備や後片付けをきちんとするといったことはだれでも頭ではわかっていても実際にはできないのはそれを習慣にしていないからだとだけいっておきましょう.学び方そのものは実は人それぞれのやり方があります.世の中がどんどんせわしなくなっている昨今では,学び方の試行錯誤が許されるのは大学4年間が最後だといってよいでしょう.大学4年間で自分にふさわしい学び方を習慣づけるようにしてほしいと思います.

今年から農業生産学科基礎セミナーを始めます
 近年,日本の大学でも1年生対象の導入教育(初年次教育)が一般的になってきています.農業生産学科では今年から農業生産学科基礎セミナーという名前で初年次教育を始めます.今年からやる試みですから,いろいろな問題が出てくるだろうと思います.学生皆さんの質問,意見などがこの授業を改善すると思いますので,積極的に意見を出していきましょう.中には試行錯誤の段階につきあわされるのは迷惑だという学生もいるでしょうが,世の中に出ればどんな事業もすべて試行錯誤でしょう.高校までの完成された教育が真の教育だと思っていたら(ほんとうは社会が日々変わっていく中で教育だけが完成されているはずはないのですが),社会に出て,自分で学ぶことはできません.
 ほとんどの人は他人の成功と自分の失敗からしか教訓を得ようとはしないのかもしれませんが・・・,他山の石といって他人の失敗から学ぶことはたくさんあります.新しい授業に積極的に参加し,失敗も(あまりないとは思いますが)成功も一緒に参加して体験することにも学ぶ要素があると思います.

初年次教育(農業生産学科基礎セミナー)のあとに続くもの
 1年生対象の導入教育である初年次教育,農業生産学科では農業生産学科基礎セミナーを終えたら,大学で学ぶ上で必要なスキル(技術)が身につくというものではありません.自分で授業や実験あるいはいろいろな場面で実際に利用しながら,自分にふさわしい形で学び方のスキルを向上していかなければならないでしょう.
 さらにこの授業では取り上げなかった内容,例えば,図書館の利用方法,レポートの書き方,グラフの書き方などは農業生産学基礎実験Iで学びます.さらにより専門に近い実験技術である顕微鏡観察,化学分析の基礎,無菌操作,組織培養なども農業生産学基礎実験I,IIで学びます.

補足 英語,生物学,化学などの知識が不足していると考える学生は・・・
 みなさんの中には英語,生物学,化学などの知識に自信のない方もいると思います.大学の授業ではよくわからないという場合,NHKの英語番組,高校の生物や化学(数学などもあります),趣味の園芸などを利用して学ぶこともできます.中学や高校の参考書を取り寄せて勉強するものよいでしょう.
 どちらにしても自分なりの学び方を早く身につけるようにしましょう.

農業生産学科基礎セミナーのトップページへ戻る