第2回 研究紹介のパワーポイントを作りましたので,そこから抜粋してみました

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 農業生産学科のPRのためのパワーポイントを全教員で作っているところです.わたしのパワーポイントができたので,このさいホームページに抜粋公開してみました.といってもパワーポイントのスライドをプリントスクリーンして,貼っただけですが・・・
作物生産学分野の小林和広の研究紹介をします.おもに3つのテーマに沿って研究しています.1つめのテーマは水稲の穂の形態形成に関する研究です.イネは種子を収穫します.お米一粒一粒はもともと花です.イネでは花の集まりを穂といいます.いちばん右端の写真がイネの穂です.このようにイネはたくさんの花を一つの茎につけます.たくさん花がつけば収穫も多くなるかもしれません.このように花の集まりである穂をどのように栽培したら大きくなるかを研究しています.2つめのテーマは水稲の高温不稔に関する研究です.イネの花は受精しないと種子になりませんが,花の咲いているときに35℃を越える高温に遭遇すると受精しそこねて,実らなくなることがあります.地球温暖化が進むと西日本でもそんな高温にイネが遭遇するかもしれません.まん中の写真はイネが咲いているところです.イネは1時間くらいしか咲きませんが,このわずかな時間でも35℃以上になると実りが悪くなることがあるのです.しかし,高温に対する強さはイネの品種によって異なることがわかっています.どのような形質のイネが高温に強いのかを研究しています.これ以外に島根県にいくつかある炭酸泉という二酸化炭素をたくさん放出する温泉を作物栽培に生かせないかと考え,二酸化炭素ガスを利用してイネの苗を改良できないかを研究しています.
イネの花の集まりである穂は品種によってさまざまな形をします.そして穂に着く花の数は品種によってずいぶん異なり,日本の代表的な品種であるコシヒカリに比べ,タカナリはずいぶん大きな穂になります.写真右上がコシヒカリです,一方,その下のタカナリは穂が大きく,たくさんの花がついていることがわかります.このような穂は1次枝梗,2次枝梗と呼ばれる2段階の枝分かれをすることによって大きくなります.まん中の図で,青い部分が1次枝梗,赤い部分が2次枝梗です.タカナリでは赤い部分である2次枝梗を増やすことによって穂が大きくなっています.このように1次枝梗,2次枝梗と枝分かれし,複雑な形をしている穂ですが,最初はいちばん左の写真のように単純な構造をした茎頂分裂組織からできます.実は葉も茎も穂もこの茎頂分裂組織から分化してできるのです.どのように栽培したら穂がおおきくなるかを茎頂分裂組織の構造,例えば左下の図のような構造なども考慮して,研究しています.
地球温暖化によって病気や虫の増加,灌漑水の不足などさまざま問題が起こる可能性が指摘されています.地球温暖化の程度によっては西日本においては真夏の気温が35℃を越し,イネの花粉に障害が起こり,種子が実らなくなる可能性があります.しかし,高温になるかどうかは未来の話ですので,主に右上の写真のような人工気象室を利用し,人工的にイネの花が咲くときに35〜40℃の高温にして,イネの受精がどれだけ阻害されるか,そのとき花粉の発芽がどれだけ悪くなるかなどを研究しています.左の写真は高温に強い品種の開花しているときの写真です.まん中は蛍光顕微鏡によって花粉管が光を発するようにして,花粉の発芽の様子をわかりやすくして観察している写真です.さらに人工気象室では実際の田んぼとまったく同じ環境条件とはいえません.本当の田んぼで調べることも大切です.そこで,オーストラリア・ニューサウスウエールズ州および中国・江蘇省に行き,実際の田んぼでイネが高温に遭遇したときにどうなるかを調査しています.必ずしも35℃という高温に遭遇できるわけではありませんが,オーストラリアはときに40℃にもなるのにほとんどそのような高温は問題になっていません.一方,中国江蘇省では2003年に高温のためにイネの収量が減りました.このような違いはなぜ起こるのかを調査して,明らかにしようとしています.
島根県には炭酸泉といって,二酸化炭素をたくさん放出する温泉があります.植物は光合成して生長し,光合成の原料のひとつが二酸化炭素ですから,人為的に二酸化炭素を増やすと植物の生長がよくなることがあります.しかし,実際の田んぼでは広すぎるので,二酸化炭素を人為的に増やすことは無理です.一方,価格の高い果物などではハウスで栽培すれば二酸化炭素を効率的に高めることができるので,重油やプロパンガスを燃やして,二酸化炭素を増やし,収量,甘味などの品質を高めて栽培することはすでに技術として確立しています.イネの苗なら小さいので二酸化炭素を増やした環境に置くことができます.そうして生育を促進した苗を植えれば収量などが増えるかもしれません.ここ2,3年の研究で,二酸化炭素を与えるだけでは苗の中の窒素が不足するので,窒素肥料の追肥を組み合わせると効果が大きいことを見いだしました.現在,さらにこのような効果が安定して毎年あるのか,増収の仕組みはどうなっているのかなどを研究しています.