関心の所在

1.土壌生態系における土壌窒素の無機化
 名古屋大学の今は亡き沓名重明先生さらに東京大学の仁王以智夫先生の指導のもと始めた土壌窒素の無機化に関する研究はいまも重要な研究テーマです。土壌窒素の無機化,硝化,不動化過程などに関心があります。これまでに,乾性褐色森林土における硝化阻害,無機態窒素現存量の時間的空間的変動を調べました。また,マレーシアの熱帯林において土壌窒素のフラックスをイオン交換樹脂を使って調査しました。

2.土壌−植物系の資源利用
 土壌中の有機態窒素が無機化および硝化され植物に再利用される過程は近年さまざまな経路が発見されるなど研究が活発に行われている分野です。土壌養分の可給性や細根などを通した植物側の働きかけなどに関心があります。博士課程では,針葉樹人工林の根系を切断し,切断した区画と切断していない区画の土壌窒素の動態を2年間に渡って比較追跡しました。また,樹木によって吸収する窒素源はアンモニアなのか硝酸なのか異なると考えられているのですが,スギやヒノキではどちらが重要な窒素源であるのかポット試験で調査しました。

3.落葉の分解
 森林土壌と耕地土壌の大きな相違はまず最表層に蓄積した有機物層の存在でしょう。とくに有機物層の厚い土壌では,有機物層内の物質動態が重要になると考えられます。最近では地球温暖化の原因となる二酸化炭素ガスの挙動を把握するために林床の有機物層の調査がさかんになっています。博士課程では,針葉樹人工林の落葉の分解過程を調べ,炭素と窒素が経時的にどのように変化するか(量的にも質的にも)を4年間にわたり調査しました。熱帯林の有機物分解には土壌微生物よりも土壌動物が重要な役目を果たしています。マレーシアの熱帯林でシロアリの摂食行動と落葉分解の関係についても調査しました。

4.いま何に興味を持っているか
 日本の森林だけでなく,マレーシアの低地フタバガキ林(パソ森林保護区)およびその周辺で1992年から断続的に調査をしています.日本の森林と同じような内容の調査を「場所を変えて」することもありますし,熱帯ならではの調査も実施しています.
 現在の研究のキーワードを並べると,「熱帯林,土壌,炭素,窒素,循環,重金属,根系,雨,温室効果ガス,団粒」になるかと思います.

 自分自身の研究や卒論修論などで取り組んでいる課題は以下の通りです.
・三瓶演習林の黒色土上に成立する森林において樹木の分布や立地条件が土壌窒素の無機化などに及ぼす影響は?
・半島マレーシアにあるパソ森林保護区の低地フタバガキ林においても樹木の分布と土壌特性の相関はいかに?
・大気汚染物質から土壌生態系への窒素負荷が有機物分解および分解過程での窒素動態に及ぼす影響は?
・酸性雨は現在進行中の環境問題であり,将来の森林に何が起きるのか?
・二酸化炭素,メタン,亜酸化窒素など温室効果ガスは森林生態系の中でもできたり消えたりしているようだが?
・土壌構造の基本にある土壌団粒はただの泥団子とは違うはず!
・樹木の根系はどれくらいの重量があり,どんな役割をはたしているのか?


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