1. 底生生物による水域の浄化

  2. 底生生物を用いた環境解析

    3. 貝類の生態


      4. 貝殻内部構造に関する研究

         5. 汽水域の環境に関する研究
研究紹介
水圏生態学研究室の主な研究内容を紹介します
水圏生態学研究室では現在、主に大型底生生物(貝類や海藻など)を主な材料に、生物の生態的特徴を調査しています。生物の環境との関係を理解し、どの生物をどのように利用すると環境復元や修復に役立つかについて検討しています。
 二枚貝は、水中の懸濁物を濾過して接食することにより、水を直接浄化します。植物プランクトンの増殖を抑制し、生態系を安定化させる役割もあります。また、アサリやヤマトシジミなどの水産有用種を漁獲することにより、水中に過剰にたまりがちな栄養塩を陸に上げる役割を果たします。この役割は海藻も同様です。このような底生生物を人間や渡り鳥などの生物が利用することが大切です。生態系の食物連鎖を通じた物質循環を促進することが、水域の浄化につながります。その浄化機能を高めるために、我々に何ができるかを考えて、底生生物の研究を行っています。

 また、島根大学の近くには、宍道湖・中海という日本有数の汽水湖があります。このような河口域は人間生活の影響を受けやすく、環境が破壊されています。特に中海は、干拓堤防の建設などで大きく環境が改変され、生物の生息にも影響を及ぼしています。 環境悪化がどのように水生生物に影響しているのか、それを改善するにはどうすればよいのか、についても研究しています
中海のサルボウガイに関する研究

現在、山口研究室のトピックになっているのは、サルボウガイです。
サルボウはかつて中海で大量に漁獲されていた二枚貝ですが、人間活動による環境悪化に伴い、中海では漁獲されなくなりました。中海の環境修復の目標として、サルボウガイの復活をあげ、地元の中海漁協組合員と共同して現状の調査をしています
中海の海藻を用いた水域浄化
閉鎖性が高い中海では、海藻が枯死して海岸に打ち寄せるため浅場の底生生物が斃死する現象がみられます。海藻を漁獲し有効利用する方法を検討し、栄養塩の系外除去と水域環境の向上を目指しています。
中海で底生生物を増加させ、水質浄化能力を高める

中海は、農地を作るための公共事業として干拓・淡水化計画があったため、干拓堤防の建設で閉鎖性が高まり、浚渫による窪地の形成もあり、貧酸素水塊が拡大しました。また、浅場を埋立した結果、水質浄化能力のある底生生物が減少して、水域としての浄化能力が低下した状態にあります。この中海を豊かな水海としてよみがえらせるために、底生生物を増加させる方法を検討しています。
シジミの生態に関する研究
ヤマトシジミの食性
ヤマトシジミは何を食べているのか?
植物プランクトンだけではないようです。


動物プランクトンや他の底生生物との関係

ヤマトシジミとおなじ一次消費者に相当する動物プランクトンや他のベントスと共存することで、お互いにどのような影響をもたらすのでしょうか?


移入シジミと在来シジミの分布状況
ヤマトシジミは島根の名産品ですが、最近、外国産のシジミを輸入して投棄したため、移入種(タイワンシジミ)が増加してしまいました。その実態調査を行っています。


などなど
淡水性シジミの分布調査
島根県の用水路には移入種であるタイワンシジミが増加しつつあり、在来種マシジミの生息を脅かしています。
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貝殻から環境や成長の履歴を読みとる研究
貝殻は付加成長するため、その生き物が生きてきた過去を記録しています。この性質を利用して、貝殻から、過去の環境変化や成長速度を読みとるための方法を開発しています。

中海産のサルボウ

タニシの水質浄化能力

巻き貝の中にも水質浄化能力があるものがいます。タニシがその例です。止水域に適応したタニシは、付着藻類を摂食する能力と、二枚貝に匹敵する高い濾過摂食する能力を併せ持つことがわかってきました。

貝殻に刻まれた情報の例

宍道湖産ヤマトシジミの貝殻断面
透明層と不透明層が繰り返し、その周期と酸素炭素同位体比のパターンが一致している
Yamaguchi et al (2006)

絵:辻井要介