研究テーマ

Metallomicsという研究領域

「ゲノム (genome) 」という言葉があります.これを単に「遺伝子」と理解するのは正確ではありません.「gene [遺伝子] 」にラテン語で総体や全部という意味を持つ「~ome」という言葉をつなげて作られたのが,「ゲノム (genome) 」です.ですので,「全遺伝子」と理解するのが正確です.
現在では,RNAを対象にした「transcriptome」,タンパク質を対象にした「proteome」,そのタンパク質などの代謝物を対象にする「metabollome」などがあります.「~ome」を「~omics」にすると、研究領域や研究手法になります.

急に金属の話になりますが,DNAポリメラーゼやRNAポリメラーゼは亜鉛 (Zn) を含んだ酵素です.他にも金属(半金属)を含むタンパク質は多くあり,その多くが活性中心として機能しています(タンパク質の約30 %が金属と結合することで生物学的機能を果たすと言われています).ヒ素(As)やセレン(Se)は代謝され糖として体外に排出されます.このように,生物にとって金属が重要な機能を担っていて,様々なオミクス領域と関連があるのです.

私の研究領域は金属 (metal) の網羅的解析 (-omics) を研究手段としたメタロミクス (metallomics) 研究です.メタロミクスという言葉を提唱したのは原口紘炁先生 (名古屋大学 名誉教授)です.現在は,メタロミクスは正式な科学的キーワードにもなり,その名のついた専門誌も発刊されています.日本発の研究領域でもあることから,日本のメタロミクス研究は活発であり海外からも注目されています.

(金属)元素は良い面と悪い面をもっています.「重金属」と聞くとその堅苦しい響きから,公害病のイメージと繋がり環境汚染物質としての面が強調されます.こういった面から,毒性学や環境化学の研究対象となります.一方で「ミネラル」と聞くとどうでしょう?それは,5大栄養素の一つであり健康化学や生化学の対象になります.

こういった背景から私は,「生物」と「環境」におけるメタロミクス研究を行っています.
生物領域の研究では、体内微量元素濃度のパターンから病気の診断法を確立する研究や,特定の金属の体内動態や蓄積機構を金属タンパク質の面から解析します.
環境領域では,多様な元素濃度の微妙な違いを指紋として汚染の発生源とその寄与率を解析する研究や,環境中(汽水域等の)元素の動態の解明を目指します.また,野生生物を用いた環境モニタリングや野生生物への暴露影響評価も行っています.

また,これらの解析を行う上で必要な新規の分析手法の開発や工業製品へ応用する研究も行います.

具体的な研究例

  • メタロミクス解析による癌の新規判断法の確立

  • 銅蓄積動物における銅代謝機構の解明

  • PM2.5に含まれている金属のリアルタイム分析による発生源解明

  • 島根県水質のメタロームライブラリー作成による金属動態の解明

  • 野生動物を用いた台湾における半導体関連金属汚染の実態解明