ICP-MS/MSによるスペクトル干渉の低減

例えば,イオウ を質量電荷比 32で測定するとします(m/z=32).その場合,溶液中の酸素もイオン化し,2量体となると,16O2+32S+と同じ質量電荷比になってしまいます.このような多原子イオンや同重体イオンによる干渉をスペクトル干渉と呼び,ICP-MS分析における問題の一つです.

この干渉を除去する方法の一つが,コリジョン/リアクションガスを使用したもので,四重極の前段に反応セルを設置してスペクトル干渉の原因となるイオンを排除する方法です.多原子イオンを壊す方法や,目的イオンの多原子イオンを生成する方法に分かれます.
さきほどのイオウの例でみますと,16O2+の干渉を受けない質量電荷比で測定するために,反応ガスにO2を使用します.すると,32S+は酸化物として,m/z=48に32S16O+として検出されます.
しかしながら,もともとm/z=48となる元素が含まれている場合は32S16Oと区別することが出来ません.

我々が導入した装置は,この問題を解決するために反応セルの後段(Q2)だけでなく前段(Q1)にも四重極を搭載しています.このように質量分離を2回行うのでICP-MS/MSと呼べる装置になりますが,ESI-MS/MSなどで母イオン⇔娘イオンを調べて構造決定を行うものとは根本的に目的が異なります.ICP-MS/MSの場合は,反応セル内の反応をコントロールするためのものです.各元素の反応性の違いを利用して同重体イオンの測定も可能になりますし,特に力を発揮するのは高マトリックス中の微量成分の分析です.そのためには,測定する試料に含まれているマトリックス濃度やプラズマ内での反応に関する広範囲な知識が必要になります.